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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■BÉJART BALLET LAUSANNE JAPAN TOUR 2021『バレエ・フォー・ライフ ─司祭館はいまだその魅力を失わず、庭の輝きも以前のまま』
BÉJART BALLET LAUSANNE JAPAN TOUR 2021『バレエ・フォー・ライフ ─司祭館はいまだその魅力を失わず、庭の輝きも以前のまま』@東京文化会館 大ホール
モーリス・ベジャール・バレエ団『バレエ・フォー・ライフ』おおおうめちゃめちゃ泣いてしまった、マスクしててよかった。朝から夜、目を覚ましてから眠りにつくまで、生まれてから死ぬ迄。死者を悼み、その人生に敬意を払う。2008年を逃しているので15年ぶりに観たのだけど、衝撃と感動は変わらないな pic.twitter.com/JbM9kouy0F― kai ☁ (@flower_lens) October 14, 2021
振付・演出:モーリス・ベジャール
音楽:クィーン / W.A.モーツァルト
衣裳:ジャンニ・ヴェルサーチ
前回観た2006年の公演(ゆうぽうとホールももうないねえ)では、ドクターストップがかかり渡航を断念したベジャールに代わり、フィナーレ「ショウ・マスト・ゴー・オン」のセンターをジル・ロマンが務めたのだった。ベジャールは翌年亡くなり、最後の来日は2004年となった。今回ジルが姿を現したとき、彼を待っていた、というようなどよめきと拍手が起こった。ジルのもとへひとりずつ駆け寄ってくるダンサーたち。キスし、ハグし、握手する。拍手は幕が降りる迄、幕が降りたあともずっと続いた。
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2019年の頭だったか、映画『ボヘミアン・ラプソディ』がロングヒットしていたタイミングで『バレエ・フォー・ライフ』の来日公演が発表された。それから延期に次ぐ延期、長かった……待ちに待った。その間、多くのひとが亡くなった。フレディ・マーキュリーとジョルジュ・ドン、そしてウォルフガング・アマデウス・モーツァルト。若くして亡くなったアーティストたちを悼むこの作品も、普遍と現在を持ち合わせている。白いシーツは人々の身体に休息を与え、翌朝の活力をもたらす。あるいは死後、その身体を包む。果たしてダンサーはシーツのなかで目覚め、それを投げて駆け出し、再びシーツをひろげて永い眠りにつく。美しい日、素晴らしい日、でも、ときどき絶望的な気分になる。フレディが唄う。ショウをとめるな、幕を降ろすな。
所謂クイーンのヒットパレードではない。ライヴテイクも多く、ブライアン・メイのギターソロ(マジックのようなその演奏に改めて惚れ惚れする)だけで構成されているパートもあり、ユニークな選曲でもある。最後の「ショウ・マスト・ゴー・オン」はライヴテイクではなく、一瞬考えて「そうか、フレディはライヴでこの曲を唄うことはなかったんだ」と気づく。間に入るモーツァルトも効果的。
「ブライトン・ロック」「コジ・ファン・トゥッテ」の大橋真理にシビれ、「カインド・オブ・マジック」でのリロイ・モクハトレのウォーキングに、「ゲット・ダウン・メイク・ラブ」の大橋真理とガブリエル・アレナス・ルイズのパ・ド・ドゥにため息が漏れる。「ウインターズ・テイル」で舞う羽毛が客席に届く。ヴィト・パンシーニのまとう雰囲気に目を奪われる。
そしてジュリアン・ファヴローのフレディ、めちゃめちゃよかったな……花束みたいなかわいらしさ。フレディの言葉をなぞり、英語と仏語でメッセージを送る。フレディならではの奇天烈な衣裳もなんなく着こなし、バナナも被っちゃう。しかもそれがかわいい。キラキラした瞳で「ワ〜オ!」なんていう姿も愛嬌たっぷり。ヴェルサーチの衣裳も堪能。男性ダンサーが履くヒール、厚底のラバーソール、極彩色のドレスとモノトーンのユニフォーム、背中側が牛柄のようになっているウェディングドレス。キュート、セクシュアル、ビューティフル。彼も悲劇の死を迎えたひとりだ。
S:沈黙、孤独、スペクタクル。I:不確実性、孤立、理想。D:嘲弄、苦悩、距離。A:分析、苦悶、愛。AIDSは仏語だとSIDAになる。不思議と使われるイニシャルは同じだ。フレディとジョルジュの命を奪った病名を分解し再構成する。馴染みのダンサーも、今回初めて知った若いダンサーも(既にフレディやジョルジュの死後に生まれたダンサーもいる)、その身体を通して新しい『バレエ・フォー・ライフ』を見せてくれる。ベジャールのダンスとフレディの音楽は、こうして受け継がれていくのだ。
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10月14日(木)
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