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by kai
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■BÉJART BALLET LAUSANNE JAPAN TOUR 2021『人はいつでも夢想する』『ブレルとバルバラ』『ボレロ』
BÉJART BALLET LAUSANNE JAPAN TOUR 2021『人はいつでも夢想する』『ブレルとバルバラ』『ボレロ』@東京文化会館 大ホール

二度の延期を経て遂に開幕。一昨日既に東京にいた彼らの心情を思うと、尚更感謝の気持ちでいっぱい。日本初演の新作『人はいつでも夢想する』(音楽ジョン・ゾーン!)最高でした! 現在が普遍になるのは、どこを見つめるかにもよるのだな。 #モーリスベジャールバレエ団 #BéjartBalletLausanne pic.twitter.com/vXKdAGhRl4― kai (@flower_lens) October 9, 2021
前々日、大きな地震があった。東京は震度5強の揺れ。311のとき、大勢の外国人が帰国していったことを思い出す。興業は中止、外国人の料理人がいる飲食店も軒並み閉店し、その後再開することがなかった。あのときは原発事故があったからということもあるが、それにしたって、あれだけ揺れればこの土地にいたくもなくなるだろう。コロナ禍で二度の延期を経てやっと来日公演が実現したのに、まだこんな妨害(といいたくなる)があるかと歯ぎしりする思いだったが、彼らはステージに立っていた。

■『人はいつでも夢想する』
振付・演出:ジル・ロマン
音楽:ジョン・ゾーン
シナリオ、映像協力:マルク・オローニュ
衣裳デザイン:アンリ・ダヴィラ
照明デザイン:ドミニク・ロマン
ジル・ロマンの新作、日本初演。ジョン・ゾーンが音楽という時点で自分の嗜好に合うだろうと期待が膨らんでいましたが、やはりとても好きな作品でした。体感も短かかった。早くもまた観たい。
「彼」が旅をする。それは夢か現実か……中東を連想させる衣裳の「族」たちが笑顔で溌剌と踊り、「天使たち」が大きなビーチボールを投げ合って戯れる。そこへ投下される殺戮の風景。笑顔が消える。映像のなかで生きる「彼女」と、「彼」の目の前に現れる「彼女」。楽園に憧れ、楽園を追われる旅。
当然連想するのは、今中東で起こっていること。最後の曲が「Alab and Jew」というのも意味深長だ。願うべくは、今後この作品が「今」として未来へ続くのではなく、繰り返してはならない過去だと振り返ることが出来、尚且つ素晴らしい作品として残ること。
「彼女」ジャスミン・カマロタは、映像内での悲しげな瞳と、実体の伸びやかな肢体が印象的。シャープであり静謐。「彼」の苦闘が汗として現れる、ヴィト・パンシーニの肉体に生命力、同時に死の匂い。
天使を演じた大貫真幹、岸本秀雄の重力も時間も感じさせないような(まさに天使)、伸びやかな踊りが印象的。そして後述のインタヴューで十市さんが「今ベジャールバレエにはポワントを履いて踊る男の子がいる」といっていて、へええと思いつつ調べることもなく劇場へ行ったのだが、登場した途端「あ、きっとこのひとだ」と惹きつけられたダンサーがいた。リロイ・モクハトレ。軽やかで神秘的、性別も年齢も判らない(これまた天使)。今回ポワントで踊る作品はなかったが、それでも目を奪う魅力がある。『バレエ・フォー・ライフ』ではどのパートを踊るのかな、楽しみ。
ジョン・ゾーンって多作+インプロ要素も多いのでどれがどの曲だっけ? てのも多いんだけど、よりにもよってNaked Cityの「Blunt Instrument」が使われていたのには笑いが出てしまった。マイク・パットンと山塚アイちゃんがVoですよ…あれは忘れようにも忘れられんで……。いや、笑いがってのはインパクトがすごかったということで(シーンとしては笑うどころか戦慄するところです)ステージングにぴったりの楽曲でした。というか、この曲からジルがあのシーンを想起したということですね。ちなみにベースはフレッド・フリス。大好き。

■『ブレルとバルバラ』
振付・演出:モーリス・ベジャール
音楽:ジャック・ブレル、バルバラ
衣裳デザイン:ジャン=ポール・ノット
照明デザイン:ドミニク・ロマン
『ブレルとバルバラ』こういう注意書きがされているところにも好感が持てた。普遍と不変は違う。ベジャールのダンサーはみんなちがって、みんないい(みすゞ)! 衣裳がまた素敵で! #モーリスベジャールバレエ団 #BéjartBalletLausanne pic.twitter.com/aeUhNBIDEN― kai (@flower_lens) October 9, 2021

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