ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■中野成樹+フランケンズ『Part of it all』
中野成樹+フランケンズ『Part of it all』@えこてん 廃墟スタジオ、屋上スタジオ
中野成樹+フランケンズ 『Part of it all』うひゃー面白かった! オールビーの『動物園物語』の一部を3パターンで上演。廃墟スタジオで通常版〜ピーターが三人に増えた版。屋上へ移動しメンバーの子どもたちを交えた版。子どもがその場にいることで、ジェリーをどう見るか(扱うか)が変わってくる。 pic.twitter.com/bORlxoZPwh— kai (@flower_lens) July 18, 2021
中野成樹+フランケンズ『Part of it all』ピーター=白、ジェリー=赤の衣裳。屋上では青い衣裳の人物(所作は能のそれ)が現れて、廃墟で死者たちの話を聴いていた観客は「あーあれかー」と自然に受け入れていたように感じたのも面白かったな。(チケット裏面の画像は複数あって、私のはこれ) pic.twitter.com/38mOLyOU0Q— kai (@flower_lens) July 18, 2021
お初のナカフラ。観たい観たいと思いつつ機会を逃しているうちに、ナカフラのメンバーにも環境の変化が訪れていました。出産、育児で演劇に関わる時間がなかなかとれない。でも、公演はやりたい。では、どうする? 「戯曲の上演に、私たちの日常生活をかぶせる」「『大好きな演劇を一生続けられる方法』に出会えるかもしれない」プラン(パンフレットより)による、東京では五年ぶり(!)の復活公演です。一日限り、二回公演の初回(11時開演)を観ました。
えこてん、初めて行きました。江古田駅前の古〜いファッションビル(し、昭和!)の階段を上る(エレベーターはない)。主に撮影スタジオとして使われているスペースで、コンクリート打ちっぱなしの四階が「廃墟スタジオ」、五階が「屋上スタジオ」。味わい深いロケーションに早くもワクワク。つくづくこういうシチュエーションに弱い。今ではサイトスペシフィックアートという名前がついていますが、連れまわし演劇と呼んでいます。
受付を済ませ、並べられているパイプ椅子に着席。フロアには『動物園物語』ではおなじみ、ベンチが一脚置かれています。中野さんと、ドラマトゥルク長島確さんのアフタートークならぬビフォートークで幕開け。『動物園物語』の紹介、全編上演しない理由、誤意訳について、ナカフラの現状など。この時点で「ピーターが三人になる」といわれ期待が膨らみまくります。
さて、はじまりはじまり。まずは原作パートから。「動物園に行って来たんです。動物園へ行ったんですよ、動物園。あのね、動物園へ行って来たんだ!」。聴き馴染みのある冒頭から、どの辺りだったかな……お互いの名前を知るところ迄は行かなかった、年収の話をするところはやった。早川書房から出ている戯曲でいうと、十頁弱というところか。公演が決まったときの速報では「原作の冒頭わずか3〜4ページのみ上演!」でしたが、稽古を重ねるうちにもっと進めることが出来たそうです。ちなみに早川の鳴海四郎の訳とはちょっと違いました。
続いては、公園で談笑している会社の同僚らしき三人に氷結のロング缶を手にした男が話しかけてくるという誤意訳パート。「ジェリーと犬の物語」も登場します。「真っ黒な怪獣みたいな」犬はトイプーに、ハンバーグはハリボーに。ピーター側が複数になることで、ジェリーは「なんか変なひとが来たよ」という目に晒されることになる。「スマホで撮影」「ネットに書いちゃお」「電通」といったキーワードから、現代人はどこでダメージを喰らうか、何を恐怖しているかが見えてくる。公園は、街は、目に見えないピーターという“社会人”で溢れている。
屋上へ移動、誤意訳をもうひとつ。青い青い空の下(天気も味方しましたね!)パラソル出して、しゃぼん玉吹いて、ビニールプールで水遊び。ピーターたちとその子どもたちが過ごす、平和な夏の休日。そんなところへやはり氷結のロング缶を持ったジェリーがやってきたら? 父ピーターはジェリーの話を聞くテイで彼を取り囲み、子どもから遠ざける。母ピーターはさりげなく子どもの目にジェリーが入らないよう誘導する。大人たちは明確にジェリーを危険人物と見なし、子どもたちを守る態勢に入っている。そんな一触即発の緊張感のなか語られる「ジェリーと犬の物語」。
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07月18日(日)
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