ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■飴屋法水 × 山川冬樹 × くるみ『キス』
BUoYフェスティバル <芸術と抵抗>のプロローグ #2 飴屋法水 × 山川冬樹 × くるみ『キス』@BUoY

pic.twitter.com/b5MJs4v0nM— kai (@flower_lens) April 17, 2021
初日。水都の記憶を暗渠へ押し込めた東京。荒川と隅田川の間に位置する北千住、海抜−3mの場所にある、浮標と同じ発音を持つ会場。そこで起こることは空気を分け合う(奪い合う)ことで、それはつまり命を分け合う(奪い合う)こと。そして今、分け合っているその空気にすらひとの命を奪う力を持つウイルスが潜んでいるかもしれない。飴屋さんと山川さん、ふたりの信頼関係がないと出来ないキス。それを見ているくるみさんも、ふたりへの強い信頼を持っている。

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来るのは二度目のBUoY、あの独特の「気」は相変わらず。入場すると、まず目についたのは人工呼吸器。『Pneumonia』、『ASYMMETRIA』に登場した「ピューちゃん」だ。咄嗟に横町(慶子)さん! ピューちゃんだよ! と心のなかで叫ぶ。生身の肺(『Pneumonia』と同じなら豚の肺=フワ)を繋がれたピューちゃんは、肺に空気を送り乍らせっせと動きまわっている。いやー、ここで会えるとは。

次に目に入ったのは、会場を斜めに横断するように張られている紐にマスクを干しているひとりの女性。マスクを袋から出し、たらいに浸して絞り、等間隔に干すという動作を繰り返している。彼女の邪魔にならないように、どこで観ようか……としばしうろうろ、会場をぐるりと囲んでいるパイプ椅子から自分の席を選ぶ。元銭湯のこの場所は、あちこちにマンホールがある。蓋は開けられており、入場者が転落しないように三角コーンでガードされている。用心し乍ら歩く。スピーカーから近い位置、壁面に映写されている映像が見やすい位置。スペースの中央にドデカい柱があるので、どこから観てもどこかが死角になる。作品の全貌を目にすることは出来ない。ひとりの人間がひとつながりの時間で、全てを把握することは出来ないという前提にまず襟を正す。

腰を落ち着け、改めてマスクを干す女性を眺める……くるみさんじゃないか。めちゃ大人になってる! とたじろぐ。生まれる前から(一方的にだが)知っていて、その成長を定期的に目にしていたが、出演者として観るのは久しぶりだ。それにしても数年でこんなに大きくなるのか、そうだよなあ、こどもってそういうものだよな。コロスケさんのように腕と脚が長い。身長もこれからもっと伸びるだろう……そんな身体的な外見だけでなく、とにかくその落ちつきぶりに驚いた。淡々とした一連の動作にはひけらかしもなく、観客への目くばせもない。

立ち見客を入れるということで開演が遅れている間、壁面の映像を眺める。黒髪でふくよかな飴屋さんが菌プロレスをしている。あーこれ、テクノクラートの……どこでやったやつだっけ? 本編で飴屋さんが言及して思い出す、メキシコだった。ということは、『スワン666』とも無縁ではなかったということか、と今更乍ら思い至る。耳をすませば、大人の男性とこどもの言葉遊びが聴こえてくる。こちらもどっかで……帰宅後『The Voice-Over』で使われていた音声だと判る。山川千秋さんと幼い冬樹さんの声だ。

マンホールのガードが外される。入口付近に設置されている山川さんのブースに立てられていたメガホンスピーカーから、飴屋さんの声がする。上演にあたっての諸注意と、だいたいの上演時間。この時点では「70分くらい」だった。直後、マスクを干した紐がプツリと切れる。ハッとするように動作を止めるくるみさん。開演の合図だ。壁面スクリーンに飴屋さんの顔が浮かぶ上がる。暗視カメラで撮ったような色彩。飴屋さんは水面から顔を出している。こもった声、ポコポコという水音。えっこれライヴ? 飴屋さんどこにいるの? 話を聴いているうちに、どうやらマンホールの下のどこかにいるようだと判ってくる。ここで初めて、自分たちがいる床下が水で満たされていることに気づく。思わず首を伸ばして、目の前のマンホールを覗き込む。水面が見える。身体がこわばるのが分かる。


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04月17日(土)
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