ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■ねずみの三銃士『獣道一直線!!!』
ねずみの三銃士『獣道一直線!!!』@PARCO劇場
池谷さんの色気ある演技が大好きで、過去それを見せてくれたのは赤堀演出だったんだけど河原演出できましたようれしい! 今これを舞台で観られてよかったなー、あたしゃ舞台が大好きだよ…そういうのを書いてくれたクドカンもねずみの三人も有難う〜#ねずみの三銃士 #獣道一直線 pic.twitter.com/VGukmtSyWL― kai (@flower_lens) October 17, 2020
好きな演出家は沢山いるけど、信頼している演出家というと断然河原雅彦と鈴木裕美なのです。ホンのキモを的確に掴む膂力、空間の大小を見極め、全方位に注意を払える鳥の目。そして品のよさ。いやマジで。河原さんには品がある。いい方を変えれば、自分のつくるものに対してブレないという矜持がある。自分がこれ迄観たミュージカル/音楽劇で不動の一位は『いやおうなしに』です。
以下ネタバレあります。
PARCO劇場の顔のひとつとして、オープニングシリーズに彼らがラインナップされているというのが痛快でもあり納得でもあり。ねずみの三銃士=生瀬勝久、池田成志、古田新太に宮藤官九郎が書き下ろすホンは、ヒドい話でゾッとする話。「どうしてそうなった?」を追う話。『万獣こわい』では北九州監禁殺人事件がモチーフになっていましたが、今回は首都圏連続不審死事件がとりあげられています。「魔性の女!」動画のところでは松山ホステス殺害事件の福田和子元受刑者かな、と思ったのですが、思えば福田元受刑者は結構何度も映画/ドラマ化されてますよね。木嶋佳苗被告の事件は昨年刑が確定したばかり。数々のゴシップ記事はあれど、こうした作品はまだ少ないように思います(柚木麻子『BUTTER』がそうらしいけど未読)。
その木嶋佳苗被告がモデルとなっている人物を池谷のぶえが演じる。男たちは「被害者は何故この女に惹かれ、(おそらく)騙されていると気付いていたのに金を差し出し、(おそらく)殺されると気付いていたのに彼女から離れなかったのか?」を追う。クドカン演じるドキュメンタリー作家は、その謎を知りたくて撮影に着手する。ところが取材先に現れたのは、コロナ禍で暇になった病気(生瀬=パニック、池田=心配性、古田=アル中。愛あるあて書きですなあ)の役者三人。彼らは事件を再現するというテイで、「ドキュメンタリー」作品に強引に参加していく。役者たちは登場時から「ありゃ私服じゃん!」(特に古田さんな・笑)という衣裳だが、当然そこには「演技」がある。
「なんでこんな女に?」。自分のことを保守的だというドキュメンタリー作家にはそれはわからない。しかしその妻と役者たちは、どんどん「こんな女」にのめり込んでいく。当然だ、「こんな女」の魅力的なことといったらないのだ。その説得力は、池谷さんの存在あってこそ。前述したように池谷さんの色気が大好きなのだが、過去その魅力に正面から迫ったのが赤堀雅秋の『葡萄』だった。河原さんは、そこに渾身のコントをぶつけてきた。コントには悲哀がつきまとう。そのギリギリを、その表裏一体を、池谷さんは演じることが出来る。妖しく、寂しく、人生を謳歌する「こんな女」。
『氷の微笑』のストーンよろしく超ミニのタイトスカートで脚(勿論生脚です)を組み、蜷川幸雄のように角型灰皿をぶん投げ(「蜷川さんが投げたのはその灰皿じゃない!」、爆笑)、角刈りで寿司を握り(いや、握ってないな。握らせてたな・笑)、『七年目の浮気』のモンローのようにスカートを吹きあがらせる。なんて格好いい、なんて生命力溢れる姿。輝いて見える。
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10月17日(土)
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