ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『シークレット・ジョブ』
『シークレット・ジョブ』@シネマート新宿 スクリーン1

一週間限定というので慌てて行ってきた、公開待ってた『シークレット・ジョブ』! 廃園寸前の動物園を救うため、大の大人がウンウン考えて出したアイディアが着ぐるみってのがもうおかしい。ホッキョクグマは着ぐるみも本物(か!?)もかわいい、お気に入りはナマケモノ pic.twitter.com/uRI6P5vkpY― kai (@flower_lens) July 24, 2020
『エクストリーム・ジョブ』の制作チームが再集結とのふれこみ。『エクストリーム〜』では捜査拠点を隠すために開いたチキン店が繁盛しちゃってましたが、こちらの動物園はひとが来ない。さあどうする。

売却が決まっている動物園に少しでも付加価値をつけるべく送り込まれた弁護士と、事情を知らない四人の職員。収益をあげるため、動物園を再生させるため、新園長となった弁護士が考え出したのは着ぐるみの動物たち。ホッキョクグマ、ライオン、キリン、ゴリラ、ナマケモノに扮した職員たちは文句をいいつつも客を呼び戻すため奮闘するが……?

「いや、無理だって」と思いつつも、着ぐるみが確かによく出来ているということもあり「遠ければわからないって!」とか「この角度からなら大丈夫だって!」という無茶苦茶な理屈にだんだん同調してしまう(笑)。そして職員たちを応援したくなる。なんだかんだで皆動物と、動物園のことが大好きなのだ。腰を傷めても出演(?)し続けようとする前園長、新園長に反発しつつも的確なアドバイスをする獣医、ボヤき乍らもトレーニングに励むうち本気になってしまうゴリラ担当の子。そしてあまりやる気がなさそうに見えたナマケモノ担当の子が実は…というところで、もう……。あんなさ〜業務中にも彼氏とのカカオトークに夢中だったあの子がさ〜!「キエー絶対動物園再生して!」と握りこぶし。

自身の出世のためにやってきた弁護士が、だんだん園長として動物園を守りたいという気持ちに変化していく流れも素敵。コカ・コーラを飲むホッキョクグマを看板にしよう! って辺りからもう寓話めいてくるので、ハラハラしつつも楽しんで観られました。『ワールド・ウォーZ』でブラッド・ピットがペプシコーラを飲むシーンから楽しくなっちゃったのと同じ原理です。普段だったら動物にもの投げるシーンでおまっ何すんだと思いますが、コメディとして観ると決めると「演出」として楽しめるというか、作り手側が観客のことを「現実との区別がつく」と信用しているからなのだろうとも思いました。『ワールド・ウォーZ』ではペプシがスポンサーなのかなと邪推したもんですが、今回はコカ・コーラの宣伝になるなあとニヤニヤしたり(笑)。

観終わったあと振り返ると、強烈な風刺に気付きます。お金を動かすため、いきものたちが暮らしている環境をいとも簡単に破壊する。狭いところに閉じ込めて見世物にする。職員たちは動物に扮することで、来場者が動物たちに対して行なっていることに初めて気付いたのかも知れません。こういうとこも、非常時における人間の本性を容赦なく描いていた『ワールド・ウォーZ』と共通点あるなあ、意外にも……。

だからこその、あのラストシーン。ひととき彼らを見つめたクマは「黒ハナ」だったかも知れない、でも違うかも知れない。黒ハナは彼らとわかってこちらを向いたのかも知れない、でも違うかも知れない。動物と人間は心を通わせたのでした、なんて結末にしないところに好感が持てました。安易に動物を購入出来ない理由として、ワシントン条約にもしっかりふれていましたね。


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07月24日(金)
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