ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ホワイト・クロウ』
東京国際映画祭『ホワイト・クロウ』@EX THEATER ROPPONGI
で、神保町から六本木。 #東京国際映画祭
ソ連のバレエダンサーヌレエフが「自由」を求めて亡命する迄の五週間。タイトル通りの規格外だった彼が、自分の才能を信じて欲望のままにつき進む姿に圧倒される『ホワイト・クロウ』。監督はレイフ・ファインズ pic.twitter.com/H4YQ9dsOpY― kai (@flower_lens) October 27, 2018
は〜レイフ・ファインズ…レイフ・ファインズだった……。
レイフ・ファインズ監督第三作は、バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフの亡命劇。フランスで西側の「自由」にふれるヌレエフと、ソ連でダンサーとしての才覚をあらわしていく若きヌレエフが交差し乍ら進む。こども時代(この子役がめちゃめちゃかわいい)はともかく、青年ヌレエフの過去〜現在は極端に容姿が変わるわけでもないので序盤は「え、今どっち?」と戸惑う場面も多い。ロシア語、フランス語、英語が使われ、なおかつ画面には日本語と英語(国際映画祭ですからして)の字幕があるので視界が忙しく、若干注意散漫になってしまったところもあり……集中力をかなり使い、終映後はぐったりしてました(笑)。一般公開されたらじっくり観なおしたい。
展開に慣れてくると、意味は判らずとも音の感じでフランス語と英語が聴こえていたらフランス、ロシア語だったらソ連にいる場面なのねと把握出来るようになってくる。そしてソ連のシーンの殆どは回想だということも見えてくる。思えばその回想と現在を繋ぐ役割は、レイフ演じるプーシキンだった。
フランスに着いたバレエ団のメンバーたちが、パスポートを預ける描写が印象的。現在東側諸国と言われる国ってどこが残っているんだっけ? などと考える。冷戦時代の東西の交流は、スポーツと文化が主だった。だけだった、といってもいいのかもしれない。歓迎パーティでは両国のダンサーが揃うも会場はまっぷたつ、会話をするのもはばかられる雰囲気。その緊張を破るのがヌレエフ。最初に外出して街に繰り出すのも、門限を破るのもヌレエフ。傲慢ともいえる言動、その根拠として考えられる生い立ちも描かれますが、それらが同時に彼の魅力となっていることも映画は描きます。彼の亡命を手助けしたクララ・セイントとの関係が顕著。恋人を亡くしたクララにヌレエフは「悼む方法は自由だ」といい、亡命後連絡もよこさなかったヌレエフのことをクララは「そういうひとなのよ」という。
クララや、ヌレエフの才能を瞬時に見抜いたピエール・ラコットの描写は、どこ迄史実なのかわかりません。しかしそのやりとりの生々しいこと、登場人物が生き生きとしていること! そして空港での亡命シーン。その場にいるかのような緊迫感を味わった。ステージの高揚、観客席の熱狂、故国の閉塞感。どのシーンもひいては見られない。稀代のバレエダンサーが世界に知られることとなる、その瞬間に立ち会えた気分になる程の臨場感でした。
ヌレエフを演じたのは、バレエダンサーのオレグ・イヴェンコ。ステージのシーンは勿論不安なく観ることが出来、芝居の面でも堂々としたもの。目の力の強いこと! 獲物を逃さない猛禽の目。レンブラントの『放蕩息子の帰還』を見つめるシーンが象徴的です。常に「自由」を渇望していたヌレエフの姿が鏡写しになるよう。もっとも、彼は帰還することはなかったのだけど。魅入られたひとが巻き起こし、魅せられたひとが巻き込まれる芸術という名の嵐。それはそのまま美や自由という言葉に置き換えられる。自由を追い続けたヌレエフの青春を見事に体現してくれました。
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終映後のQ&Aは楽しい時間。初めて実物を拝めたレイフ・ファインズは、果たしてイメージどおりのひとであった。は〜このひとたらしが〜! かわいらしいだろうが〜! という。ラフな格好を見られたのもよかった…ジーンズ履くイギリス人が好物です(例:Squarepusher)……以前いた会社の社長が「アメリカ人じゃないんだからジーンズなんて履かないよハハハハハ」とかいうイギリス人だったからその反動もある(笑)。は〜よくお似合い! あとすごく靴(足)が大きかった印象。くるくる変わる表情も仕草もかわいかったです。もうかわいらしいという言葉しかない。
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10月27日(土)
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