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by kai
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■『万獣こわい』
ねずみの三銃士『万獣こわい』@PARCO劇場

♪四〜五年毎にやってきて、なんとも言えない三人が、なんとも言えないゲストを迎え、なんとも言えない芝居をやる〜♪(歌詞ところどころおぼろです)ねずみの三銃士でございま〜す。そもそもタイトル知ったとき、万獣って女性と女性器に関係するだろうな〜くらいには思っていてですね…なにせねずみの三銃士ですから。そっから考えて、キャスティングされた女優は相当大変だろうなと勝手に思い込んでおりました。果たして何割かは当たっていたような。クドカン冴えてる。と言うかクドカンの書くもの、この路線が自分の好みなんだな。彼が女性の恐ろしさを描くとこうなる。人間の弱さを描くとこうなる。

そして河原さん、今となっては裕美さんばりに信用出来る演出家です。導入、ドラマの見せ場、観客をショウとアップサイドダウンへ巻き込むリズム感。そのどれもが絶妙で退屈させない。非常に後味の悪いなんとも言えないストーリーを、エンタテイメントとして見せきる腕前に感服。それを見事にロデオした役者陣にも感服。以下ネタバレあります。

実際にあったふたつの事件(北九州監禁殺人事件、尼崎事件)をベースに構成したと思われます。密室で起こる事件、当事者にしか理解し得ない状況。実際に手を下さず、望みのままにひとの命を操る人物は、どうやって罪に問うことが出来るか?罪悪感のない人物に、その罪を理解させることが出来るか?主犯の心理状態は憶測でしか語られず、周囲の人間の言動で状況は動いていきます。個人的にこの手の事件には興味を持ちがちなので(…)関連文献は結構読んでいた。序盤でうわー、これは相当後味悪いだろうな、と覚悟を決める。基本的にものごとを悪い方へと考えるタチなので、マスターとその妻の間に生まれた娘もきっと「そんなつもりはなかったのに」虐待されて死んでしまうだろうなあ、くらい迄考えました。最悪…だけど、実際その芽はあったよね。マスターのあの台詞は、そこ迄考えて書かれたものだと思う。

で、こういうエグい話はその“主犯”が相当ふっきれてくれないと実感が伴わないものです。夏帆さん、よかったエグかった。エグい役やってます、と言うがんばりが透けないとこがいい。この女優もともとこういう資質があったよねと思うことが出来る。これは河原さんの演出も貢献度が高いと思う。そして実質主役と言っていいのではないか、小池栄子さん。品質保証としても強いと言うか、ああこのひとが出てれば大丈夫だな、と思わせてくれる女優さんですが、今回は巻き込まれ型、受け身の役柄なのに存在感が際立っている。一芸披露的な場もさらっていくし(物まね王座決定戦、一瞬あれ旦那さんかと・笑)ボケやツッコミと言った間も巧い。小松和重さんは冒頭の落語スタイル含め観たいものを観せてもらえた!と言う感じでお得感がありました。

ねずみの三銃士の三人は、自分たち発信の企画であり乍ら(あるからこそ?)ゲストをたてるようなポジションになっている感はありますが、その分もともとの資質がにじみ出るようなキャラクターを嬉々として演じているように感じました。嫁に頭があがらないのにフラフラ若い子に寄ってしまう生瀬さんの情けなさ、笑顔でひと殺しそうを地で行くような古田さんのおっかなさ、ふたりの間を軽妙に跳び回り、一歩退いた立ち位置で戦況を見極める成志さん。三人のやりとりを観られる楽しみもあります。一箇所古田さんが本気で台詞を忘れたらしい妙〜な間があったんだけど、そのときの生瀬さんのツッコミ、それをニヤニヤ見ている成志さんの図とか、面白かった(笑)。


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03月22日(土)
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