ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■THUNDERCAT JAPAN TOUR 2022[2nd Show]
シンバルのスタンドにナットやフェルトをつけておらず、曲によってクラッシュとライドをつけ換えたりしていた。それにしてもこれだけのパワーヒッターでこのリズムキープ力。力む様子は全くないのにビートが強靭、音が鋭敏、手数は膨大。全ッ然ブレないしダレない状態がずーーーーーっと続く。対する雷猫も安定感ドッシリの16ビートを弾き続けまくるので、もうヤバい以外に何をいえばいいのか。個人的ハイライトは冒頭のツイートにも書いた「I Love Louis Cole」〜「Overtime」〜「I Love Louis Cole」。何が起こったかと思った。ノンストップで「Overtime」に入ったことにも驚いたけど、まるまるやって何事もなかったかのように「I Love Louis Cole」に戻ったところにも腰が抜けた。インタールード扱いかよ! KNOWER絡みでは、昨年末リリースされた「Satellite (Louis Cole & Genevieve Artadi)」もやりました。キー変えてないと思うんだけど、ジェネヴィーヴの音域をファルセットで軽々唄いこなす雷猫の歌唱力にも感嘆。「Government Knows」も下ネタ絡めてちらっとやりましたね(笑)、こんな形で聴けるとは。

デニスのサポートも見事で、どなたか「存在感の消し方・出し方も絶妙」と書いていたが正に、でした。EDMテイストのシンセからジャジーなエレピ、ソロもさらりと入れてくる。デュオではこうはならない、トリオだからこその拡がりです。ひとつの曲が、演奏によってこんな遠いところ迄行けるんだ。そんな場面の連続。三人とも根っからのミュージシャン。この日この場で一度しか聴けない演奏を聴かせてくれる。そうだ、それがライヴだよ。ソロやKNOWERだとキャラ(コンセプト?)重視で無表情なことが多いルイスが、終始すごい笑顔だったことも印象深かったです。セッションの悦びが滲み出ているかのようでした。

ルイスもデニスも唄えるひとなので、美しいコーラスワークも堪能。サンダーキャットの繊細でシリアスな面にもしっかり触れることが出来ました。親友マック・ミラーの死は、前述のソニマニからすぐのこと。その後ビーガンになったという話を伝え聞いていて、随分細くなった姿を画像でも見てはいましたが、やはりひと目見た第一印象は「痩せた!」。伏せ字満載のMCをして笑っていても演奏が始まると本気と書いてマジの表情になるし、それでいてフロアのこともよく見ている。終盤すうっと演奏落として「そこのひと大丈夫?」と倒れているひとがいることを知らせ、安全を確認したらそのままヌルっと演奏の続きに戻る。最初からやりなおし、とかじゃないのよ。途中から途中にシームレスに戻ったのよ。これにはシビれた。

客電がつき、終演のアナウンス。2回公演だしもう無理かな、でも諦めきれない。拍手を続けていたら出てきてくれました。アンコールは「Tokyo」と「Tron Song」!!!

Can I just stay one more day? キャー、いていて!

Don't ever wonder where i'm going. キャー、いやいや!

終わってみれば約90分のセット。そんなん普通の外タレのフルライヴと変わりませんやん……これを3日連続て。(軽々弾いてるようでいて)手は痛いんだよ〜って以前インタヴューでいってたけど(そりゃそうでしょ)、キツい条件呑んでくれて本当に有難い。きっちりメンテしてほしい…全日程終わったらちょっとはフリータイムがあるといい……そして無事帰って! 家に帰る迄が遠足です! この言葉がこれ程実感を伴う今ですよ!

すごく楽しかったけど、すごく痛みがあって、すごく優しさに溢れたライヴでした。亡くなった先人たち、友人たちとの思い出を語り継ぎ、この日を待ち望んでいた観客の思いを引き受けてくれた。愛する日本のカルチャーに敬意を払ってくれた。サンダーキャットが愛するTokyoという都市、Japanという国に住む者として、彼を幻滅させたくない、彼の思いを裏切りたくない。自分も健やかに逞しくそれなりに生きねば。そんなこと迄考えてしまった。

ジャズファンにもロック好きにもクラブ人脈にも愛される。興奮しつつ熱く語るひとたちと一緒に、長い動く歩道を歩く。そうだ、こんな時間含めてのライヴ体験だった。嬉しさを噛み締めつつ帰路に就きました。


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05月16日(月)
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