ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■飴屋法水 × 山川冬樹 × くるみ『キス』
今これをやるか、今やるならこれしかない、か。飴屋さんも山川さんも後者をとる。空間に、時間に身を任せる。身体がもつか心配だが、結果どうなるかはこちらの想像など及ばぬ次元にある。無事最終日を迎えてほしいとひたすら祈る。しかし祈りは「おまじない」で、当人にも死者にもきっと届かない。

それにしても……こうやって観ていると、「今、ここ」であり乍ら、これ迄の飴屋さんと山川さんの活動(再びベタないい方をすれば生きざま)からすれば、今回の作品は至極自然な流れだとも感じる。菌にプロレスをさせた飴屋さんの『丸いジャングル』は1997年(ついこのあいだ迄『平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989-2019』に当時の様子が出展されていた)、献血ならぬ献息を募り、肺と人工呼吸器の関係を歌に託した山川さんの『Pneumonia』は2010年の作品だ。

終始緊張感に満ちた時間だったが、ふっと気持ちが和らぐ瞬間もあった。飴屋さんは映画『奇跡の人』の吹替の話なんぞをして笑わせる。「日本語吹替では『うおお、お、みずうう!』っていったの。ウオーターだからうおお、ていってんのに、うおおからいきなりみずって、ねえ」。「パ」の声を売り渡している山川さんは「葉っぱ」を「はっぴゃ」、「ラッパ」を「らっぴゃ」と発音し、その都度くるみさんに聞き返される。対話の途中で突然「訂正しまーす、やっぱ70分じゃないや、上演時間変わりまーす、90分超えまーす!」とキレ気味に叫ぶ飴屋さん。ヒューヒューとくるみさんを冷やかす大人げない山川さん。生きることは苦しく、滑稽で楽しい。身体の機能が停止する迄それは続く。

会場を出る。自分が立っている道の下には水が流れている。大きく息を吸った。

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・EPAD 飴屋法水インタビュー 『創作のコアにあるのは、“半分半分”という目線』┃ステージナタリー
「その場限りで消えてしまう有限性こそ、演劇の宿命だと思ってきましたから。(中略)また劇作家というより演出家だと思っているので、戯曲もほぼないですしね。」
「たとえ数が少なくとも興味を持った人が、いつでも観ることができるのはすごく大事だと思うんです。」
「時間を経た目が、過去に出会う回路ができる、(中略)他人の手を借りながら、こうして有限を超えることがありえるということ、これもまた人間の証なんでしょうね。」

・EPADポータルサイト
・Japan Digital Theatre Archives
2月に開設された「Japan Digital Theatre Archives」「EPAD」は、舞台芸術をデジタルアーカイヴ化するプロジェクト。飴屋さんの作品はそのときその場に居合わせた者の記憶に深く刻まれるが、形として残すことが難しいものが多い。過去の活動は『2minus』(後述)くらいしかまとめられたものがなかったので、こうして未来の誰かが作品に触れる場を設けることはとても重要なことだと思っている

飴屋法水 × 山川冬樹『キス』この状況下是非観に行ってともいいづらいけれど、毎日当日券は出すようです。行くことが可能で前売とり損ねたひとも諦めないで。
久しぶりに読み返す。 pic.twitter.com/udwP6HsdPm— kai (@flower_lens) April 17, 2021
2002年に出版された『2minus 第1号/特集:飴屋法水 Ameya! Style』(サイトはここに残っています)。この本、製本が甘かったようで買って数日後には表紙から本文が外れた(笑)んだけど、今でもだいじに持っている。ミルキィ・イソベさんのデザイン大好き

一枚の絵をきっかけに広がっていった。
絵の力って凄いんだなと気づかされる瞬間でした。
飴屋さんに感謝です。 https://t.co/uJBJgDtf2d — 大 倉 な な (@nananokura) April 19, 2021
・大倉なな『おぼろげに花』
作中語られていた絵画。終演後退場するとき、出口付近に飾られているのに気がついた

で、こちらも見てきました。急な閉院だったんだ、どうしたのだろう。そして建物はどうなるのだろう #大橋眼科 #北千住 pic.twitter.com/nYjh7vB8U2— kai (@flower_lens) April 17, 2021
・北千住の名物「大橋眼科」。近代病院建築の豪華絢爛さを間近で堪能せよ!┃Deepランド

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04月17日(土)
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