ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■SPC 28th Anniversary event / 29th Anniversary Special Session 高橋徹也クインテット『異郷』
もともと『ある種の熱』はジャズやボサノヴァ要素のある作品。とはいうものの、菊地成孔の言葉を借りれば、高橋さんのつくるものは「ジャンルミュージックにお手本がな」い。手前味噌だが、以前『小林建樹と高橋徹也、と菊地成孔の話』で高橋さんの作曲手法は“野生の思考”によるものでは? と書いたのだが、少し前にご本人が「自分は音楽の理論的な部分についてほとんど知らない。ある時期からは意識的に無知でいることを選択してる。それでも長く多くの曲を作ってこれたのは聴いてきた膨大なレコードと本のおかげ。その断片を自分なりの解釈で曲にしているだけだと思う。今のご時世、無知でいることは意外と難しい気がする。」と書いており、やはりか、と改めてその思いを強くした。膨大な音源を聴き、独自の嗅覚をもって先人たちの蓄積と功績に辿り着く。それを自分のものにする。そしてその“発明”を他者がなぞったとしても、決して高橋さんの音にはならないのだ。

それは歌詞についてもそうで、音源と同じく膨大な読書量により文学作品から多彩なエッセンスを抽出(引用ではない)し、独自の世界を描く。この日は楽曲制作に際してインスパイアされたものについてポツポツと話してくれたのだが、ポエトリーリーディングがアレン・ギンズバーグ(「吠える」!)に代表されるビート族のイメージ、という話に強く頷いた。勝手な感想だが、高橋さんってバロウズじゃなくてギンズバーグってイメージだったので。で、やっぱりアメリカなのだな。「郊外のパラレルワールド」、何百キロも風景が変わらないような長い長い道を走り、辿り着いたダイナーやモーテルをクルマの窓外から眺める。エドワード・ホッパーの『ナイトホークス』が吉祥寺に出現する。

『ある種の熱』全曲を終えたあとは、夏の終わりをイメージしたナンバーを中心に。「バタフライ・ナイト」は、高橋さんの思いと、それに寄り添い支えるバッキングメンバーの演奏が奇跡のような場を創り出した。余談だが、2階中央の席には「予約席」が用意されていた。最後迄そこは埋まらなかったが(椅子の下は荷物置き場と化していたが…)、座っている方がいたのだろう(勘違いだったらすみません)。大切な思いをシェアしてくれたことにこちらも感謝する思いだった。

チェット・ベイカーのことをちょっと連想した。しかし高橋さんは、破滅的な方向へは向かわないと信じている。“Open End”は続いていく。

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吉祥寺スターパインズカフェでのデビュー記念日ワンマンが無事終了。心に残る凄い夜でした。鹿島さん、坂田さん、松本さん、山本さん、そして何よりご来場の皆さまに改めて感謝を。いつも温かく応援してくださり本当にありがとうございます。今後とも音楽を通じて幸せな瞬間を共有できたら幸いです! pic.twitter.com/ClXkNWQmH9— 高橋徹也 (@takatetsu_info) September 21, 2025
昨夜のライブ。心に青い炎を灯しながら冷静にブレることなく演奏している自分を俯瞰で観ているような不思議な感覚があった。台風の目にいるような。長いキャリアの中でも初めて対峙する音楽体験だったと思う。なんせ超〜レアな場面もあったし(笑)ありがとうございました! pic.twitter.com/PA8SDlSgcG— 高橋徹也 (@takatetsu_info) September 22, 2025
高橋さんには青い炎が似合う。静かで、熱く、強い

29th Anniversary Special Session
高橋徹也クインテット「異郷」、、
ビリビリ来るようなライブだった。
このメンバーでやるのは、まさに一期一会。
タイトルどおり「異郷」を垣間見るような一夜。

#高橋徹也 #鹿島達也 #坂田学 #松本健一 #山本隆二 https://t.co/84DTiBzpLg pic.twitter.com/LiC6q51KNj— 鹿島達也 (@fenderjb78) September 22, 2025
鹿島さんも手応えあった様子

・鹿島さんは「目の上のたんこぶ」、「いや、先輩をいじるのは後輩の義務だから」。信頼関係が窺えました

・「タカテツー!」「サイコー!」と野太い歓声が飛んでいたのが新鮮。ガラの悪い(ほめてる)ジャズファンが来てるのかと思った

09月21日(日)
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