ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『教皇選挙』
終わってみれば「常に八手先を読む」前教皇の望み通りの結末になったともいえる。“目に見えぬ存在”であった女性(シスター・アグネスはイザベラ・ロッセリーニ!)に「神は私たちに目と耳を与えられている」と語らせ、新しく教皇に就任した人物がその座にふさわしくない謂れは何もない。そうある未来を神は望んでいる、と前教皇は考えた。そこに確信はない。宗教は続く。何百年も、何千年も。
ローレンスを演じたレイフ・ファインズは本当に素晴らしかった。辞職を切望しつつも選挙における疑念を見過ごすことが出来ない。自身の信仰にも懐疑心があり、揺れに揺れる。そんな人物像を繊細に演じる。今回の選挙における彼の最後の職務は見逃すことだった。いや、逃すという言葉はふさわしくないだろう。逃げ出した亀をそっと抱き上げた彼の、一種晴れ晴れしいような、しかし物憂げな表情にはローレンスの揺れが集約されていた。ファインズはエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねており、本作への思い入れも窺えた。
選挙が終わり、おさんどんから解放されたシスターノビスたち(20250409追記:後述の特別試写会アフタートークによると、この女性たちは服装からノビスと呼ばれるシスターになる前の修練女とのこと)が軽やかな足取りで礼拝堂を出て行く。「目と耳を与えられているが、目に見えぬ存在とされている」彼女たちの姿に光を見る。排外主義で、分断を煽り、ふたつの性別しか認めない人物が大統領となったあの国は、この作品にオスカー像をひとつだけ与えた。そのひとつに、そしてそれが脚色部門だったということに、ちいさな希望を見る。とても射程が長い希望ではあるが。
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はーそれにしても『オスカーとルシンダ』のオスカーを思い出す程震えるレイフ・ファインズが観られてワタシはうれしさに震えました。そして美が細部に宿りまくりであった。パンフ再入荷したら(てか公開4日で売り切れてるの…)買おう
[image or embed]— kai (@flower-lens.bsky.social) Mar 23, 2025 at 20:25
パンフレットは再入荷したものの1日で再び完売、まだ手に入れられておりません……も、盛り上がってますね?
『オスカーとルシンダ』は生涯ベストワンと確信している(敢えて確信という)映画。スクリーンで観られてないんですけどね……(涙)。オスカーも信仰に揺れ動いた人生だった。「神が私達に要求しているのは現世に存在するあいだ、すべての一瞬、一瞬を賭けることです」「生きている限り、その一瞬、一瞬を賭けなくてはならないのです」。
・『教皇選挙』<ネタバレ注意>キーワード徹底解説┃『教皇選挙』公式サイト
ISOさんによる解説、鑑賞後に是非。
(20250409追記:晴佐久昌英神父を迎えた特別試写会アフタートークレポートが追加されました)
【再掲】『教皇選挙』を観た人はぜひ「#Conclave lang:ko」で検索してください。かわいいので。— ISO (@iso_zin_) March 22, 2025
これもISOさんより。先に公開された韓国ではかなり盛り上がってるようで、かわいいファンアートがいっぱいです。ネタバレ要素あるので、こちらも鑑賞後に是非
03月23日(日)
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