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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『1996年の面影ラッキーホール』
久しぶりに集まったということもあってか、演奏はところどころ危うい感じ。ホーンもアンコール以外はひとりだったので、ファンクの迫力は薄いといえば薄い。しかし、しかしだ。本当に曲とアレンジが素晴らしい。改めて認識させられた。ベースのグリッサンドやドラムのフィルインの“間”が絶妙なのだ。そして驚いたのは(今回驚いてばっかりだな)aCKyのエモっぷり。前回観たときはニトログリセリンをステージに置いて唄っていた。シャウトも脱力気味で、高音も無理に出そうとはせずファルセットに切り替えていた。それはそれで表現力の豊かさに感心したし、こうして歳を重ねていくのねなんて思ったものだったが……。この日は最初からトップギア、絶叫も絶叫。そして絶唱。それ以前にも車椅子で出てきたりと満身創痍がデフォルト、“調子悪くてあたりまえ”を地で行く状態を観てきていただけに心配になる。やはりこのひとたちにとって芸ごとは命懸け。唄うにしても笑いをとるにしてもリスクを引き受けている。やっぱりすごいな、とこちらも襟を正す思いだった。
リスクといえば、面影のアイデンティティである歌詞。活動休止中に世の中はコンプライアンスが進んだ。彼らの歌は今どうだろう、と思ってはいた。しかし冒頭のツイートにも書いたが、彼らの歌はただただ情景を描いているのだ。「ラヴ ボランティア」はまるでリトマス試験紙だった。aCKyもsinner-yangも、あの歌詞で爆笑しているひとたちに巣食う差別や偏見を炙り出してニヤニヤしているようにも思う。歌詞についてはマーケティングとアナライズを徹底していると以前話していたが、確かに筆も舌も滑らない。社会の片隅で生きているひとたちをひたすら描写し、差別がない世界など欺瞞だと暴く。尾崎豊の「I Love You」の“何度も愛してるって聞くお前は〜♪”は性的同意について唄ってるの? という指摘にも思わず膝を打った。真面目に書くことなのかこれは、とも思うがこういうことはちゃんと記録しといた方がいいね!
今の面影はどんな歌をつくるだろう? 彼らの描く闇バイト、トー横、泡沫候補についての歌を聴いてみたくもなる。今の日本には、そんなどんづまりの題材がいくらでもある。
「小沢(健二)の『LIFE』アニバーサリーがあったんで、俺らもやれるなって思いついて」「ロリポップソニックのメンバーだったので」と笑いをとりつつ、「曽根ちゃんが死んじゃったんで、やる気が出なかった」とポツリ。「ここ、泣くところですよ」なんて茶化していたけど本音だろうな。「『メロ』は曽根ちゃんが入る前につくったので、keyがなくてもやれるなと思って」今回の再現ライヴを考えたそうです。『メロ』当時のメンバーは音楽から離れているひとも多い。彼らが今やっている仕事(行政書士、整体師、タクシー運転手……人生いろいろ)を「ご利用の際は〜」と紹介したり、「耳のこと心配してるひとがいるかも知れないけど大丈夫だから!」とフォローを入れたり、なんだかんだしっかり気配りをするaCKyでした。久しぶりのライヴということもあってか歌詞をちょこちょこ間違えて、照れくさそうに笑っていたところもキュート♡
再現だから〜と本編は『メロ』からの楽曲のみ。全然足りない、まだまだ! と熱いアンコールに応え演奏されたのは「好きな男の名前 腕にコンパスの針でかいた」「東京(じゃ)ナイトクラブ(は)」「俺のせいで甲子園に行けなかった」!!! 「スペシャルゲスト! NYから帰国してたんで来てもらいました中島カオリ!!!」とaCKyに呼び込まれSaxでカオリさんが登場。本編に続きaCKyはシャツを脱ぎ、甘やかされた身体を露わにしてフロアへ。段差がないので見えません。モニターで行方を追う。お相撲さんのように皆からパシパシ叩かれたり抱きつかれたりしておりました。帰り道、aCKyが投げたキャップをキャッチしたひとが「意外と頭ちっちゃいんだね」とだいじそうに抱えて持って帰っていくのを見た。愛されてる。
「東京(じゃ)ナイトクラブ(は)」やっぱ泣いちゃうね。「〜甲子園」は素であのフリを一緒に出来た自分が怖い。刷り込み。また会える日を楽しみに。絶対に会いたい。
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28年ぶりの面影ラッキーホール参加
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11月03日(日)
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