ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■東京バレエ団『ザ・カブキ』
全編を2時間弱(+休憩20分)で観られてしまうスピード感も題材にふさわしい。日数といった具体的な数字ではない、猛烈な速さで死へ向かうしかなかった赤穂浪士の悲劇。それを表現するダンサーたちの気迫。観客はそれを見つめるしかない。いや、目を離すことが出来ない。何しろ黒子も、猪の足もめちゃくちゃ速いのだ。由良之助の刀となんだったか──鞘か? もうひとつ小道具を持っていた──をスライディングかと見まごう素早さで引き取っていく(しかもひとつずつ片付けるので往復)黒子に、驚きの声が漏れそうになった。猪なんて被りものなので周囲もよく見えないだろう、それであんなスピード……いかにも猪突猛進。過去勢い余ってステージから落ちた猪がいたというツイートを見かけて和んだ。いや和んじゃいかん、気をつけて!
初見だったため、安定を求めて由良之助を演じた回数が最も多い柄本さんの回を選んだが(貫禄!)、秋元さんの評判もよく、初役だった宮本新大も格別だったようだ。池本祥真は勘平役。個人的に間に合わなかった、とか置いていかれる、という役柄に弱いので、勘平のあっけない死には胸を衝かれた。池本さんは3日目に演じた伴内の評判がとてもよく(確かに合いそう!)、キイィとなっている。
次回があれば全公演観たいなあ……。題材故女性ダンサーの出番が少ないけれど、そもそもバレエで男性ダンサーがこれだけ活躍する作品自体多くないのだ。それでも上野水香の顔世御前、沖香菜子のおかる、遊女たちのコール・ド・バレエにはやはり惹きつけられた。和服を基調とした、袖や裾の長い衣裳で踊るバレエダンサーの美しさが観られるのは、和が題材の作品ならでは。
音楽は1985年の録音。前述のように、ダンサーとの呼吸がだいじな附け打ちだけはライヴだった。願わくばいつか生オケ、生の義太夫での上演を観たい。毎年年末にやってもいいんじゃないかと無責任な観客は思ってしまうが、バレエの年末公演といえば『くるみ割り人形』が定番。年間スケジュールに入れ込むのは難しいのかもなあ。プログラムに迷ってしまう程作品を持っているなんて、うれしい悲鳴なのでは。
しかしこういうのを観てしまうとバレエの『四谷怪談』とか観たくなるな……『忠臣蔵』がらみですし。赤子を連れ去るねずみのコール・ド・バレエとか観たいじゃん! 猪がやれるんだからねずみもやれるっしょ! でもこんなんバレエで創作しようなんて芸術家が現在いるだろうかという話ですね……いやはやホント、ベジャールはとんでもない作品を遺したものです。
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「#ザ・カブキ」初日の幕が上がりました! 由良之助を務めたのは、これまでに世界各国で討ち入りを果たしてきた柄本弾。気迫溢れる演技で四十七士を率いました。明日も劇場でお待ちしております! pic.twitter.com/01vV7QAN1j— 【公式】東京バレエ団 (@TheTokyoBallet) October 12, 2024
「#ザ・カブキ」2日目は秋元康臣による由良之助が仮名手本忠臣蔵の世界で躍動。終演後のアフタートークでは高岸直樹と上野水香が作品の魅力について熱く語りました。明日は宮川新大が8代目由良之助としてデビューします! pic.twitter.com/uvrvmDpjjH— 【公式】東京バレエ団 (@TheTokyoBallet) October 13, 2024
「#ザ・カブキ」東京公演3日目の本日は宮川新大がついに8代目由良之助としてデビューを飾りました! 東京バレエ団の伝家の宝刀ともいうべき唯一無二のベジャール作品を、カンパニー一丸となって踊り繋ぎました。次は大阪、高槻城公園芸術文化劇場に討ち入りです! pic.twitter.com/YA23M5cDbp— 【公式】東京バレエ団 (@TheTokyoBallet) October 14, 2024
「討ち入りです!」って。中の人、なんか人格が変わっている(笑)
バレエチャンネルのリハーサルレポート。ぎゅうぎゅう(笑)。実際のステージはもっと広いので壮観です
初代由良之助、エリック・ヴ・アンの追悼コーナーも。 pic.twitter.com/vyqkobFBTf— kai ☁️ (@flower_lens) October 12, 2024
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10月12日(土)
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