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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ねじまき鳥クロニクル』
それにしても吹越さん、初演時は54歳、そして今58歳。圧倒的。舞台で観続けていきたい役者だけど、映像でも引く手あまたなのでなあ。少ない機会を逃さないようにしたい。ずっと観てきたソロアクトも、実は待ち続けている(これこそ体力が重要だもんなー)。
ナツメグとシナモンのシーンも印象深い。ここにもやはり戦争の体験がある。銀粉蝶の声は水のようだった。幼少期の楽しかった動物たちとの思い出と、それを打ち棄てることになった家族──父を目撃した悲しみが聴く側の心に沁みわたっていく。語ることを辞めた松岡広大の存在感も大きい。
綿谷ノボル役は初演から続投の大貫勇輔と、首藤康之のダブルキャスト。首藤さんの回を観た。加納マルタ/クレタは徳永えりから音くり寿に。ノボルがクレタを蹂躙するシーンは、初演では大貫さんの体格のよさ(身長が高い等、身体そのものの大きさ)が恐怖の対象になったが、今回の首藤さんは、筋肉質乍らしなやかであり、細い体躯であのようなことをする、という部分におぞましさが感じられた。音さんとのボディコンタクトが多いシーンでもある。バレエで培った女性ダンサーのサポートやリフトの技術が、こんな風に役立つものかと感心もし、演者同士の信頼関係がないと難しいシーンでもあると感じる。
トオルは冒頭で火を扱い、門脇麦演じる笠原メイと間宮は井戸について語る。マルタは水の霊媒師だった。トオルとノボルの戦いは、ノボルとクレタ、そしてノボルとクミコの戦いに反転する。相容れない火と水。男性に傷付けられた女性に、男性がどう向き合うか、ということにも目が行く。人間の嗜虐性は刷り込みなのか、と考える。
トオルというひとりの人物をふたりで演じた成河と渡辺大知。体格も声質も、唄い方も全く違う。ミュージカルの歌唱と、シンガーソングライターの歌唱。どちらも言葉の伝達度が高いのだが、今回は特に渡辺さんの歌に感銘を受けた。トオルのダークな面を引き受ける成河さんも素晴らしかった。門脇さんの声とムーブは、演じる人物=メイの若さを反映する厳しい輝き。彼女でなければ深く冥い井戸へ光を投げることは出来ないだろう、と思わせる。その光に、人類の未来を照らしてほしいと思う。どのシーンも絵になると同時に、生きている人間が舞台に立つことの意味を感じさせてくれた“特に踊る”ひとたち、インプロ含め「この日この場所にしかない」音を舞台に寄り添わせた演奏チームにも大きな拍手。
文庫も出たことだし、『猫を棄てる 父親について語るとき』を読んでみようと思う。村上さんの父世代が見たこと、体験したことを知っておきたい。死者の影を受け継いでいかなければ。そう思わせてくれる舞台だった。
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・村上春樹の小説は『ねじまき鳥クロニクル』以降に様相を変えた──キャリア最重要作を再読する┃Real Sound
さらに記しておきたいのは、『ねじまき鳥クロニクル』の戦争の描写に、村上の父親の影が色濃く投影されていることだ。
特に所属した部隊が中国で捕虜を処刑したと父から打ち明けられたエピソードは、『ねじまき鳥クロニクル』と強く結びついている。
初演時の記事
・二〇世紀満洲歴史事典┃吉川弘文館
村上は、間宮中尉を通じてなぜ満洲(中国東北部)の逸話を、これほどまでに痛烈な表現で描いたのか。それは、歴史の結節点(異世界をつなぐ井戸のようなもの)として、満洲を位置づけ、そこには多くの血が流れたことを描く必要があったのではないか(無意識にしろそうでないにしろ)。
・冒頭、トオルが掌に火をかざすシーンがある。手にはグローブかプレートを装着しているのだが、この日はその防具に火がついてしまっていた。怖! 成河さん、ハケるときさりげなく吹き消していたけど毎回そうなのかな? その熱さに苦悶するというシーンではあるけどリアルが過ぎる、気をつけてー!
・初演のとき、MOONRIDERSの岡田徹さんはご存命だったなあと思う。寂しい
・余談。首藤さん、すごいロン兄ルックだったのでニコニコした
・今回もカーテンコールでセンターに立ったおおともっち、やはり主演俳優のようだった(微笑)
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11月11日(土)
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