ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『配信犯罪』、ケムリ研究室 no.3『眠くなっちゃった』
・配信犯罪┃輝国山人の韓国映画
いつもお世話になっております。この手の短期上映作品はパンフレットが作られないので助かる

・「性暴力の傍観者も加害者」“n番部屋事件を予見”した韓国映画『配信犯罪』が伝えたいこと┃現代ビジネス┃FRaU
FRaUの記事だけど、現代ビジネスのリンクから読みました。ビジネス誌で記事になっているところが興味深い

・16歳の息子が韓国史上最悪のネット性犯罪「n番部屋事件」の実態を知り感じたこと┃FRaU
事件の真相を知りたい、と考えて映画を見ることも「加害行為」なのでは、と指摘されて言葉に詰まった
ネットがもともと危険なんじゃなく、ネット自体と使う人間がまだ未熟だからこそ、こんな犯罪が起こるんだと考えたら、犯罪を防ぐ仕組みを考えて、開発していこうって思える。学校で教わるようなネットリテラシーじゃなくて、ネット世界で気持ちよく安全に生きられる常識を新しく作っていかなきゃ、って感じている先輩や友だちもたくさんいるよ
関連記事。そうなんだよね……持てる知識や技術はいいことに使いたい。でも、そのために事例を知ることは加害になり得る。「ネット世界で気持ちよく安全に生きられる」ことが常識になるのは、いつのことだろう

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ケムリ研究室 no.3『眠くなっちゃった』@世田谷パブリックシアター

でなんで帰りが遅かったかというと3時間半の舞台を観ていたからでって、悪夢のような現実を虚構としてこの精度でやられるとめちゃ喰らうな! 素晴らしかった! 無事千秋楽を迎えられますよう! てか同じ面子で再演してください! pic.twitter.com/jeAprUUS2e― kai ☁ (@flower_lens) October 14, 2023
遅い終演にも関わらずカーテンコールが3回。野間口さんが「ごめんごめん」ってジェスチャーをし乍ら慌てて出てきました。もう帰り支度を始めていたのかな。緒川さんも北村さんも感無量の表情。

ケラさんと緒川さんが見ている世界は憂いに満ちている。表裏一体の悲劇と喜劇は、だんだん悲劇の侵食が増しているように感じる。少し前だったら、「密告したのは誰だ?」という問いに対して全員が手を挙げるシーンは、笑えるものとして用意されていたように思う。今回はそれを笑うことが難しかった。互いを監視し密告し合う滑稽さより、生き残るために必死な人々の様子があまりに痛ましく映ったからだ。この日、このシーンで客席は静まり返っていた。他の日はどうだったのだろう。

ディストピアものは虚構だからこそ、観客は絶望をなんとか飼いならし、娯楽として観ることが出来る。今作はあまりにも現実に近づいており、憂いは増すばかりだ。

しかしケラさんと緒川さんは、その憂いのなかに宝石を見出す。街に暮らす人々は、皆キートンやチャップリン、ロイドのような白塗りメイクをしている。死人のように見える。しかし青白い顔だからこそ、わずかな光をも捉え、舞台でその輝きを増す。市井の人々は懸命に生き、生きるため互いに騙し合い、協力し合い、寄り添い合う。サーカスの団員たちは、常にひとと違う道を探す。そこに脱出口がある。歌手は歌に命を与える記憶を欲しがるが、ひとひとりの心を喰うことは、自分もろとも破壊する程の力を持つ。そして記憶を失ったひとは、程なくその命を終える。思い出すらなくなったら、ひとは生きていけない。ただ、思い出が降り積もり続けることは拷問に等しい。人間に与えられた唯一の平等は、誰もが必ず死ぬことだ。なんて悲しくて、なんて喜ばしいことだろう。

小野寺さん率いるデラシネラの面々(全員がデラシネラに所属、或いは客演したことがある)が、妖精のようにも、天使のようにも見えた。壁に阻まれ、外に出ていけないひとたちの手をひいて空へと浮かび上がる力を持っているような気すらした。しかしそれは、アニメ『フランダースの犬』のネロのように、神のもとへ帰るときなのだ。そして劇中いわれたように、神は不在だ。常にどこかへ出かけている。


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10月14日(土)
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