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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『FUJI ROCK FESTIVAL '23』2日目 その3
そしてアホ巧い。知ってた。テイラーと全然違う。知ってた。もともとフーファイは、一蓮托生とメンバーが集ったバンドではない。そもそも最初はバンドですらなかった。デビューして28年、ロックの殿堂入りも果たすくらいにはキャリアを積んだ。幾度かのメンバーチェンジを経て、試行錯誤し、出来るところ迄進む。彼らもそうやって長く続けていくバンドの仲間入りをしたのだ。こちらもいい歳なので、こういうバンドが沢山あることを知っている。
しかし、今回のメンバーチェンジはこれ迄とは全く異なる事情によるものだ。こんなことが起こるのは想像より早いことだったに違いないし、彼らが描いていた未来では決してなかった筈だ。それでも彼らは、だいじなひとりを失ってなお、バンドを続けていく選択をした。そしてツアーを始め、日本に来てくれた。
……と、考えることはいろいろあれど、ジョシュのタンクトップに釘付けなのだった。デイヴの要請によるものか本人のアイディアかはわからないが、フーファイに参加してからのジョシュはいつもネタ衣装を着ている。先述の『Preparing Music For Concerts』では名札をつけ、The Churnupsとしてサプライズ出演した6月のグランストンベリーでは「MY POODLE IS CALLING AND I MUST GO」と書かれたプードルの絵入りタンクトップ。今回は…何だよ……「MY POODLE IS」迄は見える、しかし座っているので下が見えない。マイプードルイズ何! 何だよ!!! 続きが見えたのは終盤だった。「MY THERAPY」。「MY POODLE IS MY THERAPY」。マイプードルイズマイセラピー……重いな!!!
しかしこれはバンド側の気配りというか、ジョシュが居心地悪くならないように、そしてメンバーチェンジに際し、ファンたちにコンフリクトが起きないようにという気持ちの顕れのように思う。てかジョシュ、付き合ってくれて有難うとすら思うが、彼はDEVOにもいた方ですからね。こういう茶目っ気は楽しんでくれそう。というか楽しんでくれ。
「The Pretender」では、テイラーが唄っていたサビの上ハモり(というかこっちがサビメロ)をネイトとシフティが唄う。負けじとクラウドも上を唄う。改めての一歩を踏み出したバンドを歓迎するんだ、サポートするんだという気持ちが声に載る。応えるようにペットボトルの水を被ったデイヴは、まだ序盤も序盤なのにまるで2時間のショウを終えたかのように濡れねずみになっている。ねずみというか犬っぽかった。続いてMetallica「Enter Sandman」、Black Sabbath「Paranoid」のリフを挟んでくる「No Son of Mine」(日本初お披露目、待ってました!)。ギャワー! と、ここ迄がツカミ。尾を引くような歓声の中聴こえてきたリフは最新作『But Here We Are』から「Rescued」。そして『Wasting Light』から「Walk」。聴き入る。死と別れが降りてくる。いつもそうではあるものの、今日のライヴは特別なものなのだと知らせてくれる2曲。
ギャンワギャンワとなってるクラウドにハ〜イと手を振るデイヴ。キャハ☆てなペコちゃんペロリなポーズも見せ、恒例の1997年のフジに来てたひと〜、俺たちを初めて観るひと〜てな挙手タイム。この辺りから「For FUJI!」を連呼し始める。これいうと無条件に盛り上がるので楽しくなっちゃったのか、MCの度にいってた。たまに「Mt. FUJI!」もまざる。完全に遊んでいる。
今夜はスペシャルなんだ、古い友人だよ、とアラニスが呼び込まれる。汗とペットボトルの水でべしょべしょのデイヴとアラニスがハグをして、「きゃー何よあなたべしょべしょじゃない!」「テヘ☆ごめんなー!」みたいにギャハハと笑いあう。昨年のテイラートリビュートのときは言葉を交わさず、固く長い(本当に長い間だった)ハグをして離れたふたりのことを思い出してしまった。笑顔があったことにホッとしたしうれしかった。素敵な光景だった。「この世を去った美しい彼女にこの曲を」とアラニス。
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07月31日(月)
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