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by kai
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■『FUJI ROCK FESTIVAL '23』2日目 その2
『FUJI ROCK FESTIVAL '23』2日目 その2

■ALANIS MORISSETTE(GREEN STAGE)

2018年の来日公演は中止、2020年の『Jagged Little Pill』25th Anniversaryの来日公演もコロナで中止になってしまったアラニスが遂にやってくる。しかもフジに!

ここ最近のライヴはwebやSNSでチェックしていて、『JLP』セットで来ること、「Ironic」がテイラーへのトリビュートになることは予想出来た。アラニスはテイラーのことを公にはひとことも話していないが、ツアーでテイラー在籍時の映像を流し続けている。昨秋LAで行われたトリビュートコンサートでも、やはりひとことも話さず「You Oughta Know」を唄いきり、デイヴと固く長いハグを交わして帰っていった。喪失がどれだけのものだったか決して語らず、ファンとテイラーの思い出をシェアし続ける。そんな彼女が、フジでそれを見せてくれる。フーファイのTシャツを着たひとや、外国の人が続々とグリーンステージに集まってくる。

余談だが、これあちこちで話してるけど私が小林建樹を聴き始めたのって「窪田晴男とバカボン鈴木がつきっきり? フリーとデイヴ・ナヴァロを率いるアラニス・モリセットのようじゃないか、ということはきっとすごい才能に違いない!」というのが始まりだったのです。そう考えると小林さんに出会えたのはアラニスのおかげ。有難う有難う。

スクリーンに映し出されるのは彼女のヒストリー。子役時代の映像、MAVERICKとの契約後のライヴ映像、TVショウの映像、物議を醸した(?)あの全身タイツの映像も。これって個人的にはWAHAHA本舗で見慣れていたのでむしろ馴染み深かったのですが(笑)。ミュージカル作品になった『JLP』の様子も流れる。幼い頃からショウビズの世界に身を置き、センセーショナルに持ち上げたあとにすぐ落とすマスコミ、メディア(日本もな。『Supposed Former Infatuation Junkie』が出たときのRO誌の記事とかよく憶えてるわ)から距離を置き、信念を曲げずに歩んできた彼女の傍にいた大切な仲間たち、そしてファンたち。そんな彼らの25年(+3年)が、凝縮されて目の前に現れる。時間が戻る、しかし失ったひとたちは戻ってこない。

歓声とともに、彼女は颯爽と現れた。目の醒めるようなイエローのTシャツにはスパンコールでブラックパンサーが描かれている。そしてジーンズ、adidasのスニーカー。普段着のような姿で、自然体の彼女がハーモニカを吹き鳴らす。歌を唄う。それは特別なものになる。アラニスだ、アラニスだ、アラニス・モリセットの歌声だ!

「All I Really Want」でスタート、あっという間にシンガロング。『JLP』から一気に4曲。終わって確認してみたら、16曲中半分の8曲が『JLP』から。聴いている最中は「ほぼ『JLP』! 『JLP』からこんなにやってくれるなんて!」と思っていたが、オリジナルの最新作『Such Pretty Forks In The Road』からのナンバーもバランスよく入り(最新リリースの『The Storm Before the Calm』はコンセプトアルバム)、映画『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』『シティ・オブ・エンジェル』に提供した楽曲も披露と、アラニスの現在・過去・未来を一望するような内容になっていた。セットリストに「Segue」とある通り、曲間を殆ど空けずに次々と唄っていく。

マイクを両手で持って唄う。前腕の左腕にはトラ、右腕にはフクロウのタトゥー。かわいい。髪を振り乱して唄う姿は連獅子の毛振りのよう。両手を拡げてくるくると廻り、ステージ上にちいさな竜巻を起こす。ぐるぐる廻ったあとにもバランスを崩さず動きまわる。竹中直人の「まっすぐ歩ける!」ネタを連想し、思わず笑ってしまう。

それでもずっと泣いていた。自分でも驚くくらい泣いた。思い出もいろいろあるけれど、何より彼女のあの声を聴けたことがうれしく、彼女が笑顔だったことがうれしく、テイラーがいないことに泣いていた。そして「Ironic」がやってきた。スクリーンに、まだ髪の短いテイラーが現れる。若くて、よく笑い、メンバーとふざけ合ったり、真摯にリハに取り組むテイラー。フーファイ加入のためバンドを離れる迄、多くの時間をアラニスとともに過ごしたテイラー。映像をバックに、アラニスは優しい笑顔で力強く唄い聴かせる。


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07月30日(日)
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