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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『国際芸術祭「あいち2022」』1日目
ひとに見せるという前提なく、コツコツと続けられていた記録に、ある種の感動が宿る。
高齢者の交通事故や免許返納が問題になる昨今。なんというか、全然知らないひとなのに、幸せなドライバー人生を最後迄送れますように、と祈るような気持ちになった。
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・ホダー・アフシャール『リメイン』
映像作品。10数分のものだったので全編観られた。
流れ着いた多くの難民は、オーストラリアに入国を拒否されマヌス島に抑留される。美しい自然を持つ島は監獄となり、彼らから自由を奪い死へと追いやる。海の青、濡れた木々の緑、生命力溢れる濃い色彩は、同時に色濃く死の匂いを放つ。
エンドロールでは亡くなった方の氏名と死因、年齢。『アメリカン・ユートピア』の「Hell You Talmbout」を思い出す。
・ローリー・アンダーソン & 黄心健『トゥー・ザ・ムーン』
月面への旅。宇宙飛行士気分を味わえるVRには行列が出来ており断念。
・リリアナ・アングロ・コルテス『パシフィック・タイム/民衆が諦めたりするものか!』『Still Hair:アフリカ系住民のコミュニティでの髪型とケアの実践の伝統に関する共同プロジェクト』
アフリカン・ディアスポラ(移民)の歴史を辿る旅。女性の髪が暗号や地図として機能していたことを初めて知る。編み込み模様が脱出経路の地図となり、逃れた先での支援者の情報となり、資金源となる金を隠す容器となる。
・ロバート・ブリア『フロート』
とてもゆっくりと動く彫刻。ものすごく遅いルンバみたいな感じでもある。音も殆どしない。
同フロアの他の展示を観ていて振り返ると、真後ろにいたりしてビビる。魂がない筈のものがかわいく見えてくる不思議。
大小4ついる(あるではなく、ついいるといってしまう)ということだったが、3つしか見つけられず。どこか遠くへ散歩に出てしまったのだろうかなんて思う。
・百瀬文『Jokanaan』
やっと観られた! 二分割された画面の左側にはモーションキャプチャーのモデルとなる男性、右にはそれによって動かされている女性のCG映像。一見、男性=ヨカナーン、女性=サロメの図式。
しかし、オペラ『サロメ』の演奏にのせて「私を見て」と唄い上げているのは男性で、女性像はそれを再現しているデータに過ぎない。
サロメ、CGデータ、女性。彼女たちの主体はどこにあるのか、その感情はどこにあるのか。
対して、力の限り唄い叫んでいるように見える男性モデルの声はミュートされ、動きは全てモーションの素材になる。彼はCG、あるいは女性の形代に過ぎないともいえる。
最後彼らは“別れ”ることになる。容器としての肉体。
・ローマン・オンダック『イベント・ホライズン』
1本のオークの木が見つめる100年間。WW1が終わり、WW2が起こり、キューバ革命が起こり、9.11が起こる……。切り株は1日1枚壁に掛けられていくので、98枚は観られた。あと2枚には何が記されたのだろう。切り倒されたことで、樹齢100年以上のこの樹木の命は尽きたことになる。人類の傲慢さにも思いは及ぶ。
・和合亮一『詩の礫 2022』
2011年震災時の「詩の礫」、コロナ禍の2020年「Ladder」、ウクライナ侵攻以降シェルターから発信を続けるオリア・フェドロバとの往復書簡「Shelter」。さらさらとスクロールし乍らリアルタイムで読んでいたツイートによる詩が、プリントアウトされ壁一面に張り出されている。その物量。ひとつひとつは140字以下のつぶやきだが、それは確かに礫となり、鑑賞者の心に穴を空ける。
思えば“礫”という言葉を覚えたのは聖書からだった。ダビデはひと粒の石で巨人ゴリアテを倒したのだ。
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https://flower-lens.tumblr.com/post/697693593347014656
今回のメインはこの二作品。あいトリ(…)はパフォーミングアーツのプログラムが毎回面白い。キュレーターは前回に引き続き相馬千秋氏。
・百瀬文『クローラー』@愛知県芸術劇場 小ホール
上演時間は20分、各回鑑賞者(体験者といった方がいいのか)は2人ずつ。ホールは暗幕で二分割されており、車椅子の操作等のガイダンスを受け、ネックスピーカーを装着したあとは別々の入口から入場する。つまりひとりきりでの体験。
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10月08日(土)
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