ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■高橋徹也 25周年記念 Discography Live『ある種の熱 × 大統領夫人と棺』
バンドサウンドを決めたともいえるのは脇山さんのドラミング。彼が参加したことで、このバンドの「ピースが揃った」ように思う。ロックにも、ジャズのアプローチにも、インプロにもピタリと対応する。激しい演奏のやりとりから、格闘技の受身のように歌を包み込んで聴き手に届けるドラムだ。「俺は彼のビートに乗っかるだけ」「幸せな気分になれる」と紹介された脇山さんは、キャ〜照れちゃう、ってな感じで顔を両手で覆っていたが、本当に嬉しそうだった。
自分の作品をつくっていなかったらレコードを買い続けるだけの人生だった、全財産をレコードに注ぎ込む人生だった。こうして聴いてくれるひとがいるから、レコードを買うお金を我慢して(笑)アルバムつくったりライヴしたりしてる。「感謝バカ」(キラーワード!)にはなりたくないと前置きしつつ、まっすぐに感謝を口にする。鹿島さんですら「その話初めて聞いた」という薔薇イミテーション時代の思い出話も飛び出す。1月のライヴでもそうだったが、ご自身が50歳を迎えたこと、疫禍、災害、戦争といった、より具体化した社会不安を前に、照れ乍らも伝えておかなければ、という言葉が零れ出ているように感じた。25周年で50歳。5年くらい前から分かってたんですけど(笑)、そこ迄は突っ走ろうと決めていた。でも、そこへ達した自分のなかに、まだ炎があると気付いたのでまだまだ突っ走りたい、といった。聴いているこちらも背筋が伸びる思いだった。
菊地成孔さんが高橋さんを評した言葉を思い出す。「目が綺麗でね、天才的な感じで。なんていうんだろな…ちょっと神経質で軽く狂ってるんだけどものすごい親切なひとっているじゃない。音楽家でいる……ちょいちょいいるんだけど。そういう方でしたね」。音楽への愛情と狂気は紙一重。それを炎というのなら、まだまだ見たい炎がある。
同時配信(アーカイヴもあり)されていた今回のライヴ。ステージとフロア中央辺りの左右に固定カメラ、ステージ前にクローズアップ用の一眼レフ。それぞれにスタッフがついており、一眼レフ担当の方は前方客の視界の妨げにならないよう着席した上で、手持ちのカメラを掲げっぱなし。当然スイッチングをするオペレーターもいる。モニターも見ることが出来る位置だったのでときどき目をやっていたのだが、とても綺麗に撮れており臨場感もあった。コロナ禍により一気に進んだ配信ノウハウを考える。同時にそれに慣れ、敬意を忘れがちな自分たちのことも考える。照明もPAも、その背後にはスタッフがいる。ブッキング、入場整理、受付、バーカウンター、物販……現場には多くの働く人間がいる。
この日高橋さんはメンバー紹介を何度もして、全員に告知を促した。「ここはスターパインズカフェ!」とハコの存在を知らせた。いつもそうではあるが、今回は特に、現場者がコロナ禍で失ったものの大きさを感じさせた。「これで終わるつもりだったんですけど、やっぱりね」とアンコールは「夜明けのフリーウェイ」。ミラーボールの煌きは、配信視聴者にも届いただろうか。
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setlist
『ある種の熱』
01. 5分前のダンス
02. 惑星
03. 夢の中へ、霧の中へ
04. Blue Song
05. 夜明け前のブルース
06. 5 minutes
07. La Fiesta
08. ホテル・スターダスト
09. 夏の出口
10. 赤いカーテン
11. Open End
12. 夜のとばりで会いましょう
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『大統領夫人と棺』
13. ブラックバード
14. ハリケーンビューティ
15. Key West
16. 雪原のコヨーテ
17. 不在の海
18. 大統領夫人と棺
アップライトで実際に弾いたことあるのかなー
19. 帰り道の途中
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encore
20. 夜明けのフリーウェイ
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「(外野を)黙らせてやる」とつくった『ある種の熱』、「このような緊張感を持ったものを今作れるかわからない、がんばってたんだなあ」という『大統領夫人と棺』の8年を繋げたのは今のバンド。バンドっていいなあと思ったとても良い夜でした。 pic.twitter.com/GItFQpq6ON— kai (@flower_lens) April 23, 2022
写真撮るの下手くそ選手権。何故このタイミングでシャッター切ってしまったんだ自分よ…連写すれば良かった……。
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04月23日(土)
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