ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■モニラ・アルカディリ&ラエド・ヤシン『吊り狂い[Suspended Delirium]』
俯いたり横を向いたりする頭部は、角度によって表情が変わっているようにも見える。能や文楽にも通じるものがありました。
『吊り狂い[Suspended Delirium]』というなかなか物騒なタイトルですが、宙ぶらりんの頭部だけで生きているこの三人には親近感すら感じる。どうしても今の自分たちが置かれている状況に通じるものがあるのです。この状態はいつ迄続くのか。アフターコロナはいつか、それともウィズコロナで生活を続けるのか。現在世界中で思案され続けていることでもあります。そして、この翌日に戦争が始まりました。国境が閉じられる。交流がオンラインのみになる。そこから得る情報すら真偽がハッキリしない。本当のことを「自分の目で見る」「自分の耳で聴く」ことは、即ち「現場に行く」こととなり、どうしても身体が伴う。それが失われていく感覚に、アクセスオールエリアパスを持つウイルスが羨ましい、という思いすら抱いてしまう。
しかしここでも、ねこのルーミのかわいらしさと、彼のユーモアに助けられるのでした。またルーミの声がかわいくてね……人間はそれぞれ本人の声だと思うけど、ルーミは誰の声だったんだろう? いや、“本人”かもしれないな(笑)。人間に命を握られているこの愛玩動物は、強かな獣でもあるのです。いやーこうありたいな。
音楽はヤシンによるもの。登場人物たちが前を向いて移動していくラストシーンで流れる音楽は、まるでゆっくりと昇る朝日のような心地よさでした。全員が順番に“ahh, the moon.”という台詞を繰り返す様子が印象的。月は地球上のどこから見ても月だねえ。プロジェクションマッピングだったら嫌だなあ。本物の月は、どこからでも、誰でも見られるものだし、そうでなければならないのだ。
『吊り狂い』、ヤシンが「箱に入って脱出したい」と嘆いているところで、あーそういえばカルロス・ゴーンは箱に入ってベイルートへ行ったな〜と思い出してフフッとなってしまった。ベイルートはヤシンの故郷だけど、まあそれは偶然だろう。動画は逆光だけど後ろを鳥が飛んでてかわいかったので載せる pic.twitter.com/CMg4365ab0— kai
(@flower_lens) February 24, 2022
おまけ。あーかわいいルーミ♡この動画で聴こえているのが彼の声です。人形のヘッドペインティングはサイード・バアルバキ。上演が終わるとそれぞれ定位置に戻るのですが、その家路にも愛嬌を感じてしまいました。
02月23日(水)
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