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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』
こんな悲しい話だったのか。ニコニコ観てたオープニングが夢のよう。年明け早々ヘヴィーだわ……いや、年の始めに観て己を振り返るにはいいかもしれない。この作品に登場するペンギンとはオオウミガラスのこと。現在ペンギンと呼ばれている海鳥たちの、名前の由来となった鳥。絶滅したのは1844年6月3日。記録が残っている、つまり人間によって絶滅に追いやられたいきものです。文献には、最後のオオウミガラスを殺した猟師の氏名も記録されています。

自然のなかでのびのび、そして懸命に生きる動物たち。未開の地で暮らす人間たち。彼らは文明という名の自然破壊と都市開発により、命を、居場所を奪われていきます。スネアの打撃音が銃声となり、照明の明滅が自然災害となり、動物たちを、ひいてはその原因をつくった人間たちをも追い詰めていく。方舟に乗ることが出来たいきものたちと、それを見送るオオウミガラスの姿に涙。おま……ペンギン置いていくなや! あんなにかわいかったペンギンが! 皆にお給仕してくれてたペンギンが! なんで置いてかれなきゃならんの! とメラメラしますが、当方破壊の限りを尽くした人間族なのでごめん、ごめんよ……と心のなかでひたすら謝る。だいたいこれ、初演1988年ですよ。ずっと警鐘は鳴らされているんですよ。ビントレーの先見の明に頭を垂れつつ、人間進歩せなあかんよいい加減に! と思いますね…せめて自分からと、一人ひとりがそうならんと……。

いやーだってさ、ペンギン・カフェって「誰もが暴力的になり、戦争が起こる。人々は狂い出し、苦しんでいる。私はペンギン・カフェのオーナー。みんないらっしゃい。」というサイモンの夢から生まれた場所のことなのですよ。そんなシェルターのようなカフェを営むペンギンを! 置いていくか! うわあああああ(泣)。

とまあそんな話なのですが(…)、生を謳歌し命の限り踊る動物たちはとってもチャーミング。福田圭吾さんが踊るテキサスのカンガルーネズミのソロ、めっちゃ格好よかった。運動量的にもめちゃめちゃハードなんじゃないだろうかこの振付……ヒップホップダンスみたいなスピンも面白かったな。スターの貫禄をまとったオオツノヒツジとケープヤマシマウマは、やはりのプリンシパル・米沢唯さんと奥村康祐さん。ヘッドドレスで顔が見えなくても、登場したと同時に場の空気が変わります。

そうそう、シマウマパートの前の場で、ノミと一緒にモリスダンスを踊っていたうちのひとりの帽子が落ちてしまい、そのまま舞台中央に残されてしまったのです。「あんなど真ん中に……どうする?」とドキドキしていたら、登場したケープヤマシマウマが優雅に舞台上手側へと滑らせて、そこから登場したシマウマダンサーのひとり(こちらも米沢さんだったとのこと)が更に舞台袖へと蹴り込みました。かっけー! 振付を端折ることなく帽子を拾うなんて、タイミングも難しかった筈。アクシデントだけど、つい拍手しそうになりました。

そしてやはりタイトルロール・ペンギン役の広瀬碧さんが素晴らしかった。あのよちよちステップ、なんてかわいらしい。そして悲しい。カーテンコールでも、ヘッドドレスをとっても、ステップはペンギンのままでした。はあ、かわいかったな……。

サイモン・ジェフスが遺した名曲の数々を、フルオケで聴けたこともうれしかった。普段はウクレレで演奏されるリフレインが管にアレンジされていたりと新鮮でした。こうなるとアーサー・ジェフス版の『ペンギン・カフェ』もあればいいのにってなる〜。ビントレーさん、新作どうですか? 御一考を。

着ぐるみのバレエといえば『ピーターラビットと仲間たち』が有名ですよね。近年はKバレエ カンパニーのレパートリーになっているかな。こちらもいつか観に行きたいな。

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・個人的には『ペンギン・カフェ』を観られてラッキーだった訳ですが、バレエ団も、ファンの方々も『夏の夜の夢』が待ち遠しいですよね。一刻も早く制作を再開出来る環境になりますように

【ニューイヤー・バレエ】
本日もご来場ありがとうございました✨
明日は千秋楽公演!

◆1月16日(日)14:00開演

皆様のご来場、お待ちしております🐧

📸:鹿摩隆司

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01月15日(土)
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