ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■さいたまゴールド・シアター最終公演『水の駅』
最後の登場人物は舞台の奥からひょっこりと現れ、ゆっくりと近付いてくる。さい芸の舞台の奥行きを活かした演出は、蜷川さんが得意とした手法でもある。ホームレスのような姿だが、その背中にはいくつもの風船がフワフワと浮いている。ブラックとグレーの間のような、モノトーンの風船だ。この絵ヂカラは凄まじいものがあった。終わりが近づいている。彼はかつての登場人物たちが散らかしていったゴミを、綺麗に拾い集めて去っていく。残るのは更地、そして蛇口。鮮やかとしかいいようがない。演じる遠山さんの愛らしさが、現実とリンクする。

ああ、遠山さんは杖をつくようになったんだ。佐藤さんは車椅子に。ゴミの山の頂点にいる煖エさんの背後には何かあったときのためだろう、黒衣が控えているのが見える。彼らの姿は、作品のなかで違和感どころか必然として映る。

欲をいえば最後の公演、役者の声を聴きたかったな……と思っていたらあのカーテンコール。最後の「ジムノペディ」は蜷川さんが使用していたヴァージョン。出演者たちはまっすぐに立ち、明晰な声で自分の名前と年齢を語る。ゴールドシアターのオーディションで、最初の公演で語られた“台詞”だ。なんて粋な。降りてきた蜷川さんの遺影を背に挨拶する役者たちに、万感の思いを込めて拍手を送り続けた。

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千秋楽のカーテンコールでは今回出演されていない方々の写真が登場したそうで、遺影かと衝撃を受けた方も多かったようです。この方のツイートによると「体調やご都合で出演されなかった方のお写真もあった」とのこと。ホッとしましたが、いつかは、誰にでもそのときは来る。当日パンフレットには全員の今の年齢が記載されていました。

亡くなった方がいても敢えて公表はしない方針なのだろうなとも思っていました。当初の発表では出演予定だった葛西さん、最年長の重本さんのお姿も拝見したかったですが、どこかで楽しくしてらしたらいいな。ゴールドは最後迄このメンバーで行く、と蜷川さんも仰っていた。これからもずっと、彼らはゴールドのメンバーだ。

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・【連載】さいたまゴールド・シアターとわたし┃ステージナタリー
当日パンフレットにも掲載されていた、歴代作家、演出家たちの寄稿。どれも頷き膝を打ち、それぞれの公演を振り返る。岩井さんのテキストが説得力あるおかしさ

#さいたまゴールド・シアター『#水の駅』の稽古は進んでおります。ここ数日、かなり濃い稽古ができていて、全シーンがクライマックスになってきている気がします……!!

写真は大好きな金ちゃん(#遠山陽一 さん)と「監督みたいに上着をカッコ良く肩にかけたい!」と、僕の真似をしてます(笑) pic.twitter.com/nGK1ziflfh― 杉原邦生 Kunio Sugihara (@kuniooooooooo) December 10, 2021
歴代作家や演出家が相当手を焼いたと思われる(蜷川さん曰く「老人は天使なんかじゃねえ!」)ゴールドのメンバーの心をぽっかり開かせた(ように感じた)杉原さん空恐ろしいわ。遠山さんは『ワレワレのモロモロ ゴールド・シアター2018春』、『よみちにひはくれない 』と数々の名演を見せてくれました


観ているときこれ思い出してた。ナミブ砂漠のオアシスはまさに水の駅。ライヴ配信されています。いろんな動物が来るよ。クリスマスはサンタが来たそうです(笑)

中止になったのは本当に残念。宣美迄出来ていたんだなあ……観たかった pic.twitter.com/JuHGAs93bP― kai (@flower_lens) December 25, 2021
いつか観ることが出来ないだろうか。と今でも思っているし、これからもそう

12月25日(土)
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