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by kai
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■Noism Company Niigata × 小林十市『A JOURNEY〜記憶の中の記憶へ』
幕間、客電がついてもしばらくドキドキしていた(救心)。ちょちょちょ、十市さんのメロディ……むか〜しご本人がジョークでブログに載せてた「卓袱台ボレロ」(ご実家の卓袱台の上で踊ってた)でしか観たことなかったメロディを今こうして観られるとは。勿論これはベジャールではなく、穣さんの振付。しかししかし穣さん有難う〜! と手を合わせる思いでした。天井に鏡を設置し(これは『M』オマージュかな?)、フォーメーションの側面と鳥瞰を同時に見られるようにした演出にも胸が熱くなりました。

二部は一部と地続き。フロアにひとり倒れている十市さんに80年代の亡霊が襲いかかる「The 80’s Ghosts」から始まります。まーこれのフォーメーションの格好いいこと! 衣裳が80年代でニヤニヤすること! 佐和子さんのスーツの形とか、姉の喪服のこと思い出して違うところで笑ってしまいましたわ。

それはともかく、ベジャールへの、十市さんへのという作品でありつつ、穣さんの振付って格好いいなあ、Noismのダンサーって素敵だなあ……と惚れ惚れ観る。これ迄映像でしかNoismを観たことがなかったのだ。ユニゾンの型はバレエのスキルとストリートカルチャーがドッキングしているかのようで、クラシカルなのにモダン。前方の席だったので生き生きとしたダンサーの表情もよく見えた。

享楽的な、しかし暗い影をまとう80年代は、ベジャールの「革命とは!」という言葉がコラージュされた音楽により世界の悲劇を炙り出す。スクリーンには争いの映像……世界は終わりに近づいている? 現在へ近づくにつけ、やはり色々考えてしまう。ダンサーの人生、ひとりの人間の人生。今年になってオランジュのスタジオをクローズしたこと。つい最近柳家小三治師匠が亡くなったこと。苦悩の表情で頭を抱える十市さんに、また穣さんが、佐和子さんが、Noismの面々が歩み寄る。立ち上がる、そして再び踊り出す……。

これは穣さんが描いた『バレエ・フォー・ライフ』じゃないか。記憶の芸術でもある舞台。今作にも二度と会えない、かも知れない。しかしそれは彼らが次のステージに向かったためだ。ダンサーとしては休んでいたかも知れない十市さんは日々踊り続けていたし、役者としての日々も人生のレイヤーに加わった。観客は新しい、歳を重ねた今しか出来ない表現を新たに身につけたダンサー・小林十市を観ることが出来る。人生はまだ途中だ。

千秋楽の翌日、十市さんは病院へ行っていた。稽古中から膝の痛みがあるというのは、ご本人もSNSかで明らかにしていた。診断名のひとつは、疲労だけでなく年齢的なものからくるものだ。プロのダンサーからすれば厄介なハンデかも知れない。船出は初っ端からきっと不安でいっぱい。でも、穣さんがいうとおり、道化師を踊り、噺家の孫というルーツをもって、十市さんは寂しさ、悲しみを笑い飛ばして前に進んでいくのだと思います。50代の身体を乗りこなしていく十市さんの今後を見ていきたい、そして見習いたい(笑)。

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・KYOKO88%
衣裳・堂本教子さんのサイト。何度か載せてるが大駱駝艦(麿赤兒)の衣裳もやっている方です。翌日の『ゴールドシャワー』でも麿さんの衣裳は堂本さんが担当されていたので、二日続けてお仕事拝見。素敵よねえ

・ベジャールの“DNA”受け継ぐ2人が共演、金森穣×小林十市「A JOURNEY」開幕┃ステージナタリー
ステージ画像がよい〜。ポージングやフォーメーション、綺麗な照明、そしてダンサーの表情!

・日本の踊り「高い水準見て」 ダンサー・振付家の小林十市が意欲作┃朝日新聞デジタル
「僕らは踊る場所がないと生きていけない。国から補助金や生活の支援をしてもらい、食べつないだ」
「ぜひ劇場に来てと胸張って言えないもどかしさはずっとある」

・【特集:DDD2021】小林十市×金森穣クロストーク〈前編〉〜十市さんの身体は、自分が思うよりも踊っているし、語っている┃バレエチャンネル
・【特集:DDD2021】小林十市×金森穣クロストーク〈後編〉〜舞台の幕が下りた時、「終わり」ではなく「始まり」になる作品に┃バレエチャンネル
「ハンデをつけるなんて失礼なことはできないし、そんな十市さんは見たくない!」

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10月16日(土)
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