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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『アメリカン・ユートピア』
象徴的な場面はいくつもあるが、特に印象に残ったのは「Everybody's Coming to My House」。この曲を発表したとき、バーンは「望まぬ来訪者が家に居座っており、帰ってほしいなと思っている」ものとして唄っていた。ところが、デトロイト・スクール・オブ・アーツの生徒たちが合唱曲としてこの曲を唄ったヴァージョンを聴いたとき、「彼らは『皆ウチにおいでよ、この家は誰にでも開かれている』と唄っているように感じた」。自分ひとりの考えが及ばないものを他者は見せてくれる。
映像制作にあたり、バーンの前にもうひとりの「他者」が現れる。スパイク・リーのカメラ(撮影監督はエレン・クラス)は、観客の目が届かない場所を捉える。プレイヤーが目の前にいるかのような視点、客席からは決して見られない天上からの視点。多様性を謳う出演陣にはエイジアンが不在だが、カメラは客席にその姿を見る。「Hell You Talmbout」ではレイシズムの犠牲となったひとびとの肖像を新たに加え、強いメッセージをレイアウトする。2019年から2020年、この一年で次々表面化した問題と、更新されていくことの多さ、早さに光明を見た気持ちになる。パーカッションがバシバシ通るサウンドプロダクションも素晴らしかったです。爆音上映でも観たいよ〜(スケジュールがなかなか合わない)。
他者を拒絶せず、その言葉に耳を傾け、コミュニケーションを諦めない。ユートピアへの道は遠い。それでもマーチングバンドはパレードを続ける。ステージから客席へ降り、劇場を出て自転車に乗り、街へ出る。ひとと出会おう。一生に一度の、どこへでも行ける道を走ろう。ユートピアはあなたから、私たちから始まるのだ。
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SET LIST
01. Here (from American Utopia)
02. I Know Sometimes a Man Is Wrong (from Rei Momo)
03. Don't Worry About the Government (from Talking Heads: 77)
04. Lazy (from Muzikizum by X-Press 2)
05. This Must Be the Place (Naive Melody) (from Speaking in Tongues)
06. I Zimbra (from Fear of Music)
07. Slippery People (from Speaking in Tongues)
08. I Should Watch TV (from Love This Giant)
09. Everybody's Coming to My House (from American Utopia)
10. Once in a Lifetime (from Remain in Light)
11. Glass, Concrete & Stone (from Grown Backwards)
12. Toe Jam (from I Think We're Gonna Need a Bigger Boat by The Brighton Port Authority)
13. Born Under Punches (The Heat Goes On) (from Remain in Light)
14. I Dance Like This (from American Utopia)
15. Bullet (from American Utopia)
16. Every Day Is a Miracle (from American Utopia)
17. Blind (from Naked)
18. Burning Down the House (from Speaking in Tongues)
19. Hell You Talmbout (from The Electric Lady by Janelle Monáe)
20. One Fine Day (from Everything That Happens Will Happen Today)
21. Road to Nowhere (from Little Creatures)
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22. Everybody's Coming to My House: Detroit (End Credits)
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それにしても、昨日の野田さんも今日のバーンも「かつての自分の言動を振り返り、検証し、責任を持つ。過去を変えることは出来ないが、意識を変えることは出来る」と若い世代に伝えようとしている。自分たちの世代だけが逃げ切れればいいと思っていない大人がいることで若者は希望が持てる。字幕監修はピーター・バラカンでした。
余談ですがワタシのメルアドってTALKING HEADS(とパール兄弟)が由来なのでした。ずっと憧れの大人です。こういう年長さんがいると自分たちもへたっていられない、まだ大丈夫だと思える。いいときにいいものを観られた。観ることが出来てよかった。
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・『アメリカン・ユートピア』予告編(日本語版)
・David Byrne's American Utopia (2020): Official Trailer
・See Detroit Teens Perform David Byrne Song in New Video┃Rolling Stone
デトロイト・スクール・オブ・アーツの生徒たちが唄ったヴァージョンの動画が観られます
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06月06日(日)
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