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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■南極探検いろいろ その2『BLIZZARD: Race To The Pole』
うん、これはアムンセンが勝つなあ。快活に進むノルウェーチームを観て思う。実際ep.4、放送回をふたつ残しゴール。的確なデポ配置、滑らかに進む犬ぞり、防寒もバッチリで暖かそうな毛皮。スコット隊との差は明らかです(そうと分かっていての「再現」、イギリスチームは精神的にもつらかっただろう)。それでも極点を目指すという行為は並大抵なことではない。悪天候に道を阻まれ、犬はケンカし傷だらけ。ホントしょっちゅうケンカしてたな……荒くれものが多かったのか血だらけになる迄噛み合ったり、思い思いに走って紐が絡まったり、勝手に走って乗り遅れた隊員がそりに轢かれたりしていた(苦笑)。同行したマッシャーさんが泣いてしまうというシーンも。それだけに極点到達を果たし歓声をあげる場面は感動的でした。
そうそう、映像では伝わらないが相当臭いもしたかと……チェリー・ガラードが書いたように、極寒でも人体からは大量の分泌物が出ますからね。アイスランドに戻ってきた一行を迎えたホテルの従業員が、彼らとハグしたあとくさっ! て顔で離れたのは見逃せないシーンです(笑)。お風呂に入り髭を剃り、そして数ヶ月ぶりの、お皿に載った温かい食事をテーブルで。その満ち足りた顔! おつかれさまでしたよー。
最終回、ep.6でようやくスコット隊もゴール。実際のスコットたちの写真のように(まあ、敢えて意識したのかもしれないが)疲労が滲んだ表情で記念撮影に収まる。そしてあまりにも消耗が激しいため(定期的に体重や脂肪率等を計測していた)、復路途中でTVスタッフ側から終了の判断が下されてしまう。実際のスコット隊と同様に、やはり帰還は叶わなかったのです。もともとこちらのチームは常に冷静で穏やか。かなりの難局にも場が険悪になるということがありませんでしたが、淡々と状況を受け入れる様子がまたせつなかった。
歴史家、登山家、サヴァイヴァル心理学者たちのコメントも挟まれます。なんでこんなに差が出たのか、スコットは何を考えていたのか。何故、最後のデポ迄あと20kmのところで力尽きたのか……。諦めたのではないか、といわれている。帰ることを、生きることを諦めた。極地調査や資料採取も担っていたスコット隊と、極点一番乗りだけを目指したアムンセン隊には、その旅の目的からして大きな違いがある。軍隊式だったスコットと、楽天的でユーモアを忘れないアムンセンというリーダーシップの違いもある、と。ふたりが残した豊富な資料から、まだまだ検証が進みそうです。
さてアーサーですが、チームのなかでは下から二番目の年齢(隊員のプロフィールはこちら)ということもあってか大人しい印象。スコット隊長との縁も紹介されていました。25kg痩せたということでしたが、確かに出発前の体重測定ではまるまる(ホントにまるまる!)していたのに帰るときは体型も人相も変わってましたね。皆同じ服装、雪目と凍傷予防のためにゴーグルと鼻カバーをしているので、外では誰が誰だかわからない。テント内は薄暗いし、皆髭もふもふになっているのでやっぱり誰が誰だかわからない(笑)。人力でそりを引き続けた結果、肩を痛めたアーサーは極点到達を諦めることになる(ep.4で離脱)のですが、帰ることが決まってちゃんと映った顔を見て驚きました。やつれた、ではない。精悍な大人の顔になっていたのです。出発前はひよこちゃんみたいな顔だったのに! 静かに話を聞き入れ、カメラに向かってウィンク(!)して、笑顔でセスナに乗るシーンではこちらが涙ぐんでしまったよ。
チェリー・ガラード『世界最悪の旅』読了〜 1910年代の南極探検。冒険ではなく探検。本文中に「緑色をしたウイレスデン帆布」という表記があって、これのことだー! と鳥肌が pic.twitter.com/k0USbYfMdG― kai (@flower_lens) December 5, 2019
その1にも載せたこの画像は、Penguin Cafeの最新作『Handfuls of Night』のアートワーク。スコット隊は緑色、アムンセン隊は赤色のテントでした。
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・これは、すごい。BBCドキュメンタリー「BLIZZARD - Race to the pole」を観ました┃THE MUSIC PLANT Blog
野崎洋子さんのブログでDVDの存在を知り、入手することが出来ました。有難うございますー。
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05月11日(月)
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