ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■Jagatara2020『虹色のファンファーレ』
アケミが亡くなった年に生まれたという折坂さんは「Jagataraに影響を受けた友人たちは沢山いて、出られて羨ましいと。それに恥じないように」というようなことをボソボソと話し唄い出す。フロアが静まり返る。十三回忌のときこだまさんが語った言葉を今でもよく憶えている。死んだひとは現在起こってることを知らない。何かニュースがあると、ああ、アケミはこのことを知らないんだなと思う、と。この歌で描かれている中産階級は、今のこの国ではもはや中産階級ではないかもしれない。あの時代の「中産階級」を知らない世代が唄う中産階級の歌。それがこんなにも凄みをもって響く。アケミは今の日本を知らない、アケミは自分の法事が行われていることを知らない、アケミは折坂さんを知らない。そのことをまざまざと思い知らされる。
ゲストヴォーカル皆よかったけど個人的にいちばんキたのはエージさんとせいこうさんだった。抜けがよく力強いエージさんの歌声、キレッキレのせいこうさんのラップ。近田さんは「HEAVY」のフレーズを出して来た。VIBRASTONE! 隣の年配のふたりづれが「かっこいい、かっこいいよ!」と跳ねる。杖をついているひとが身体を乗り出す。涙ぐんでるひとがいる。ここの客層だと私も若手の部類なんですが、ステージだけでなくフロアにも「こういう大人(まあ充分大人なんだが)になりたいなあ」と思わせてくれるひとたちがいるというのはなんとも心強いですね。
アンコール、年功序列でゲスト紹介しますって最初に呼び込まれたのが鮎川さん、次が近田さんでちょっと驚いた(…)。近田さんも大病されたけど、今はとりあえず落ちついてるようでよかった。皆で「もうがまんできない」を唄ったんだけど、世代別にかたまってマイクを分けあってるのが微笑ましかったです。せいこうさんが「重鎮が楽屋にいっぱいいるのでもういづらくて、オーケンなんか5分くらいで出てっちゃってた」といってたのウケた。あとぼそっと書くと、トモロヲさんと町田さん……ウッ町蔵といいたい、が並んで唄ってるの見るとうれしくなりますね。『SWEET HOME』の傷が深いのでね(わかるひとだけわかってくれ)。
Jagataraはアケミの死後、ナベさん、篠田さんも亡くなって、「これからどんどん死ぬぞ」なんて寂しくなったものですが、その後はなんとかだいたい(だいたいいうな)生きてる。音楽の現場で活躍し続けているひともいるし、それこそ『ロビンソンの庭』の住人のようになっているひともいる。ゲストにしてもお客さんにしても、来たくても来れなかったひとはいっぱいいる。こだまさんが出てきたときは松永さんや朝本さんのことを考えたし。
ヒヤリとする箇所は確かにあった。おまえはおまえの踊りをおどれ、この言葉を見失わないように。旧譜が再発され、サブスクでも聴けるようになった。Jagataraが聴き継がれていきますように。次回があるかは判らないし、自分が出席出来るかも判らない。でも、バラバラに集まって、バラバラに帰っていけばいいんだ。ECDがそうだったように。
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セットリスト
セトリ。
op. オー・ソレ・ミオ〜インプロ / 吹越満
01. 裸の王様
02. でも・デモ・DEMO / 田口トモロヲ
03. タンゴ / 大槻ケンヂ
04. Black Joke / 鮎川誠
05. Fade Out / 桑原延享
06. アジテーション / 町田康
07. 中産階級ハーレム / 折坂悠太
08. ある平凡な男の一日 / こだま和文
09. つながった世界 / 向井秀徳
10. れいわナンのこっちゃい音頭 / 永山愛樹、桜井芳樹
11. 都市生活者の夜 / 七尾旅人、不破大輔
12. みちくさ / 高田エージ、いとうせいこう、近田春夫
13. 夢の海 / 江戸アケミ
encore
14. みんなたちのファンファーレ
15. クニナマシェ
16. もうがまんできない / 全員(フロアにもマイクリレー)
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・Jagatara2020
Oto(g)/ EBBY(g)/ 中村ていゆう(drs)/ 南流石(vo, dance)/ ヤヒロトモヒロ(perc)/ エマーソン北村(key)/ 吉田哲治(tp)/ 村田陽一(tb)/ 宮田岳(b)/ 関根真理(perc)/ 山崎心(sax)/ 北陽一郎(tp)
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01月27日(月)
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