ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[647784hit]

■さいたまネクスト・シアター『第三世代』
ステージにあるのは演者が座る椅子だけ。一見ワークショップ(冒頭「この作品はワーク・イン・プログレスです」という台詞がある)だが、実際上演されているのはひとつの完成形。これを二時間見せきった演者は見事でした。進行係ともいえる自虐的なドイツ人を演じた煖エ英希、パレスチナ人の少年から老人迄演じ分けた阿部輝にはネクストの地力を見た。内田健司の引き出しの多さを観ることが出来たのもうれしかった、声を張る扇動者。周本絵梨香と井上夕貴のやりあい、佐藤蛍のサークルクラッシャーっぷり、観たかったやつ! 軽薄な手打隆盛、貴重! しろくまクヌートの名がぴったり(?!)、悠然と構える續⽊淳平! そしてヤーマン松田慎也が帰ってきたぜ〜! 客演は青年座から清瀬ひかり。ネクストのメンバーって老人の描写がめちゃめちゃ巧いんですが(ゴールドシアターのメンバーと長く時間を過ごしていること、実年齢とはかけ離れた人物を演じる機会も多いことが要因かと思われる)清瀬さんも老婆の声色が迫真で、ネクストのひとだったっけ? と思いそうになるなじみっぷりでした。それにしてもネクストのメンバーって皆美声よね、発声がよいということもある。安心して聴ける舞台の声。

「ホロコーストとナクバ(1948年パレスチナの大災禍)は違う、ゲットーとガザ、ヨルダン川西岸地区地区は違う、比べないで」という台詞。そう、比べてはいけない。イスラエル人の彼も、彼女も、幕開けで謝り続けたドイツ人の彼に「もう忘れろ」「忘れて」といったじゃないか。個人対個人の関係には対処出来る。憎しみが生まれるようなら離れればいいし、友好は育てていけばいい。しかし現在、それを許さない社会の風潮が強くなっている。「〇〇だから〇〇(個人名)は好きじゃない、つきあえない」ではなく「〇〇だから〇〇人はきらい、つきあえない」となってしまう仕組みを避けられなくなるときがきたとき、どうすればいいのだろう。その圧力に直面したとき、自分はどこ迄個人でいられるかな、と考え乍ら劇場を後にしました。今も考えている。

-----

・アフタートークのゲストは山本薫さん(アラブ文学・文化研究)。作品背景の解説や、シリアに留学していたときの話も。当時は和やかで楽しい時間を過ごせたけれど、今はとてもじゃないが出かけられない場所になってしまって……といっておられた。以前シリアに住んでいたヤマザキマリさんもそう書いてたなあと思い出す。中津留さんからはリーディング公演との演出の違いについてなど。例のフォークジャンボリーのシーンづくりの話がすごく面白かった……思い切りってだいじ(笑)

・さいたまネクスト・シアター×中津留章仁の「第三世代」開幕┃ステージナタリー
そうそう、国旗を模したTシャツの衣裳(紅林美帆)もよかったのよ〜ベタだけど普段でも着れそうなかわいさで。袖には「G3」のロゴも入ってました

『演劇評論家 扇田昭彦の仕事−舞台に寄り添う言葉−』┃早稲田大学演劇博物館
蜷川さんのメモリアルボックスのとなりにフライヤーが張ってあった。だよねだよね、蜷川さんご存命なら絶対観に行っただろうから、そりゃここに張るよねとほろり。近いうちに観に行かなければ

11月10日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る