ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『アメリカン・ヴァルハラ』
ボウイは去り、ライヴで演奏されるのはボウイに深い縁がある曲。イギーとボウイが共に過ごしたベルリンも訪れる。ファンはあの曲が、この場所がどういう意味を持つのか知っている。ジョシュたちはイギーを鉄壁のバンドサウンドでサポートする。賢者を守る騎士のようだ。クライマックスはロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール。こんな由緒あるホールで演奏するなんてふさわしくないといわれた、こんな綺麗な服を着てライヴするなんて初めてだ。そう笑った先からF**Kを連呼し、イギーは服を脱ぎ捨ててオーディエンスのなかへ飛び込んでいく。フロアとステージを、笑顔とキスの嵐が襲う。マットが泣いてたの、かわいかったな。ツアーは特別なものになった。
最後に再び、ジョシュのモノローグ。時は戻らない、時間は誰にも操作できない。そうか、そういうことだったのか。これは音楽のことでもあったのだ。音楽は時間のアート。時間がとまると音楽も消える。レコーディングは終わり、ツアーも終わる。音はやむ。しかし、レコードは残る。「ジェイムズ・オスターバーグ。有難う、俺を信じてくれて」。胸がいっぱいになっていたところにこのひとこと。はっとすると同時に暗転、エンドロール。涙があふれる。ジェイムズ・オスターバーグは、イギーの本名だ。
タイトルの『アメリカン・ヴァルハラ』を指してイギーはいう。「これは(アメリカンである)自分のヴァルハラ、アメリカという国のヴァルハラだ」。働き続けなければ、動き続けなければ価値がないとされる国。盟友を亡くし、自身の死もそう遠くないと感じている自分と、この国に対しての思い。しかし同じアメリカンであるジョシュはいう、時間をつかまえられるのは死後か? それなら意味はない。生きているうちに、その助手席で楽しむんだ。自分ではライド出来ない時間というものを存分に生きろ。時間という音楽の物語。音楽にとり憑かれている者たちの物語。ジョシュによる『Post Pop Depression』回想録、そしてイギー・ポップへのラブレター。
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同日公開なのに表記が揃わんなあ pic.twitter.com/TRdJ1zuZDY― kai (@flower_lens) April 16, 2018
というわけで今作は『女は二度決断する』と同日公開だったのでした。こちらでは本当の発音に近い「ホーミ」表記でした
05月01日(火)
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