ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ボーダーライン』『アルカディア』
デルトロがとにかくすごい。あてがきだったそうだが、台詞やト書きには示されていないであろう部分の掘り下げ、演じる人物への潜り込みが見事。謎めいた登場、任務に赴く前にジャケットを丁寧にたたむ習慣、非情極まりない襲撃と拷問、移民に接するときの丁寧で穏やかな態度。彼が何故「幽霊」と呼ばれているのか、それは今の仕事の内容だけが理由ではない。彼はある意味死んでいるのだ。それらがものいわぬ表情や仕草から静かに伝わる。酸いも甘いもベニシオ・デル・トロ。彼の代表作である『トラフィック』と表裏一体の役だった。『ボーダーライン』が黒味の灰色、『トラフィック』は白味の灰色。どちらの行く末にも色濃い「死」という黒。特別捜査官を演じたジョシュ・ブローリンとの、利害の一致のみで築かれた信頼関係の描写もよかった。飄々と、ユーモアを忘れないブローリンの人物造形も魅力的。このコンビ、『インヒアレント・ヴァイス』からのふたりだったもんでちょっと微笑ましかった。
内容は違うが、『ゼロ・ダーク・サーティ』を思い出す空気感。プロ集団の仕事振りを撮る臨場感あふれるカメラ。移送を上空からひたすら追う緊張感に満ちた空撮。緊張感と同時に映し出される自然の美しさ…砂塵にぼやける視界、夕暮れの色彩。画作りにはアレックス・ウェブ(後述)の写真が参考にされたとのこと。人間が地上でどんな血なまぐさい戦いを繰り広げていても、自然には関係がない。監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。あの『ブレードランナー』続編のメガホンをとっているとのことで、俄然期待が高まった。撮影は『ノーカントリー』『007 スカイフォール』のロジャー・ディーキンス。ヨハン・ヨハンソンの音楽も素晴らしい。音響も適材適所の迫力なので映画館で観るのがおすすめです。やーなんとか時間見付けてリピートしたい。
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・映画『ボーダーライン』メイキング映像
・Alex Webb // Rebecca Norris Webb // Photographs
アレックス・ウェブはマグナムメンバーでもある。こちらの『MEXICO'S SOUTHERN BORDER』を観ると、ああ、このテイスト……! となります
・『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』オフィシャルサイト
メキシコ麻薬戦争における各組織の紹介と年表。twitterで教えて頂きました、参考になる。『トラフィック』が公開された時代から勢力地図がかなり変化していることに気付き、麻薬戦争の終結など夢のまた夢だな、と暗澹とした気分になることうけあいです
・そういえば『トラフィック』では野球だったけど『ボーダーライン』ではサッカーだったね。たまたまかもしれないけどここにもちょっと時代関係あるかな? と思ったり。野球はグローブとか、道具がプレイヤーの人数分必要だけどサッカーはボールひとつあればいい。経済状況がより逼迫していることを暗示しているのかなと
・なぜ彼らは残虐行為ができるのか? メキシコ犯罪組織との戦い描く『ボーダーライン』が問うもの|Real Sound
・一大ブーム到来!? 中南米ドラッグ・カルテル作品が量産されるようになった理由|Real Sound
『エスコバル/楽園の掟』間に合わなかったよ…上映館少なすぎるよう(泣)二番館かソフト化を狙います
・ところで今回初めて、自分はサイズの揃った車が縦列で、車間キツキツでブンブン走るシーンを観るのが好きなんだわと自覚した。車がずんぐりむっくりだとなおよい。そーいえば『ミニミニ大作戦』も大好きだったわ……
・ちなみに今作で車間を空けないのは「あんな状況で呑気に車間なんか空けてたら即割り込みされてチームが分断、あっという間に襲撃される」からだそうです。成程……
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(20160523追記)
『アルカディア』@シアターコクーン
長文書きそびれたので、twitterに落としたもののリンクを張っておきます。
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・優雅に、瑞々しく、難解は踊る。シス・カンパニー『アルカディア』|徳永京子|note
謎を観る、過去を追う、ということに関しての言語化が素晴らしいなと…プロの書き手によるレヴューを読める嬉しさよ
04月16日(土)
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