ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『自作自演』飴屋法水×江本純子
サンプリングした虫の羽音だったり、音楽だったり。音は続く。「ブルーシート」の点呼のシーン、灰色のねこのシーン。動物と人間の違い、人間しかしない行動。「教室」、くるみちゃん来てる? ここでゲストの登場です、ケンタッキーフライドチキンさんでーす。バケツ型のパッケージからチキンを取り出し、食べる。骨が残る、これはどうしますか? くるみちゃんどうする? 客席後方から声がする、「捨てる」。どこに捨てる?「ゴミ箱」。作品のなかの登場人物が実体を持って現れる。さてこちらは骨壷です。僕のお父さんの骨が入っています。これは捨てられない。何故? とか言ってこれはメレンゲで作ったクッキーなんですよ、きっと食べたら甘いんだ…サクサクサク、と言う音が響く。あんな乾いた音がするのだなあと思う。この辺りから、虚と実の境目がどんどんなくなっていく。蛇には瞼がない? 黒いパンツ、死んだら森に埋めて、虫は幸せか? さまざまな作品のさまざまなフレーズがポツリポツリと、しかしリズムを持って放たれる。「ブルーシート」の生徒たちがわいわいと話すシーンは圧巻。

「じ め ん」、この作品は夢の島で上演しました。舞台後方のスクリーンに映し出された衛星写真には日本がない。2011年、僕は10歳。2021年、僕は20歳。2050年……昔ここに日本と言うちいさな島がありました。今はもうありません。だってそれは夢だったから。夢の島だから。両親の話、僕のお父さんとお母さんはお見合い結婚で…お見合い、今のひと分かるかな? これは僕が生まれたときの写真、これはお姉ちゃんとの七五三の写真…これはお父さんの会社の保養所かな、電力会社だったからほらパラソルに電って書いてある。MARKとのコラボライヴで使用したテキストと、インプロは続く。もはや新作だ。テキストは既存のものだし、飴屋さんが話す内容も一貫している。しかし、このひとが提示するものは、毎回「今、ここではこれしかない」ものになる。

初恋のひとの話をします。名前は江本さん。……ん? ふたりで映画館に行って『ジョーズ』を観て…スピルバーグのね。最後ジョーズにアクアラングを突っ込んで爆発させるの。嘘です、『ジョーズ』なんて映画はありません、スピルバーグなんて監督もいません。だって、爆発する訳ないじゃんジョーズが。嘘、嘘、ヤラセ。ねえ江本さん、純子さん、僕たちはこのまま一緒に暮らしていく? それとも別れる? 別れたら僕たちは教えてしまうよね、娘に。人間はいとも簡単に離れられると言うことを。ずっと一緒にいたら、人間はそう簡単に離れられないと言うことを教えてしまうよね。客席のある位置を睨んで喋る。とても鋭い目。猛禽のような目。見ている先は江本さんがいる席だろうか、それとも、彼のパートナーであるコロスケさんがいる席? 自作自演、ヤラセ。嘘と本当。

音楽は流れる。言葉はリズムに乗る。強い言葉。強い音。「人間の数え方は1ではない」、礼。終演。

卓上には鈴も用意されていたが使用せず。転換のときスタッフが落とし、リン、と澄んだ音をたてた。

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さてトーク。ダウンを着てもう帰るんかと言う出で立ちの飴屋さんが出てきてうろうろ、どこに座ろうか迷っている。水が用意されているのに自分でお茶のペットボトルを持ってきている。上手側の椅子に座りぽつんと待つ。江本さんも徳永さんも現れない。どうしよう、と言った困惑顔のままニコニコする飴屋さん。客席がなごむ。やがてふたりが出てきて「飴屋さんが真ん中に座るんですよ」「もう座っちゃったから…」「ダメです、決まってるんですよ」「まだ休憩時間あるんですけどもう始めちゃいます?」。一気に場が賑やかになる。飴屋さんが時間より早く出てきてしまったらしい(笑)以下おぼえがき。

と●今回は江本さんのリクエストで飴屋さんを
え●そうです、『ライチ・光クラブ』を演出したのでそこで接点が出来て、これは是非と。失礼な話ですが今日初めて舞台を拝見しました
と●それを受けて飴屋さんは……
あ●うん、ともだちになろうと思って。僕も江本さんの作品初めて観ました。『ライチ〜』は観たんですけど、江本さんの書いたもの、舞台に立つのを観たのは初めて

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02月02日(月)
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