ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『盲導犬 ―澁澤龍彦「犬狼都市」より―』
先生/男を演じる木場勝己は、スーツ姿にソフト帽と言うダンディな出で立ち。その姿に唐さんがダブってしまってどうにも涙腺が緩んでしまったのだった。昨年『下谷万年町物語』が上演された頃唐さんはお元気で、ダブルキャストで出演もしていた。今作の記者会見に唐さんは現れたが発言はなく、再演にあたってのコメントも発表されていない。五月、『鴉よ、俺たちは弾丸をこめる』上演にあたって書かれた蜷川さんのコメントを思い出す。同世代の劇作家が、現在思うように新作を発表出来ない状況にある。歯痒い。僕の使命は彼らの傑作を現代の観客に突きつけることだ。そう言う演出家も満身創痍だ。
それにしても木場さん素晴らしかったなあ……初演と同役(!)を演じたそう。この役に関しては、今の年齢こそがベストだったのではないだろうか。ハッタリの利くふるまいが、はっとするような魅力を孕む。ハッタリが利く、と言うのは古田さんも宮沢りえもそうで、情緒の洪水をハッタリとエモさで操縦する腕力がある。ミニマルに並ぶコインロッカーのセット(中越司)の奥からどす黒く赤い巨大な太陽が姿を見せるように、その腕力で現実世界に潜む非日常を引きずり出す。リアリズムなんてなんぼのもんじゃい、その熱量の前には冷めた視線など文字通り焼け石に水。正面切っての決め台詞のキマることキマること。ハーネスをつけられて暴れる宮沢さんの妖しいエロティシズムは、パンツ脱いで見せるとこよりムラムラしましたね。これは私の性癖ですかそうですか。そんな彼らとふとしたことで縁を持つフーテン少年は小出恵介。ギラギラした登場人物たちのなかで、涼やかな風を呼ぶ平熱の役柄です。フーテンだけど。シンナー吸いだけど。フーテン少年から見る影破里夫はヘンなめくらなおっさんで、銀杏にはとって喰われそうだ。だが、彼らははみだし者として共振する部分がある。小出さんと古田さんの小気味よいやりとりは笑いを呼ぶ。とぼけたようなふたりが終盤に見せる感情の爆発は、だから効く。しかしそこで終わらないところがまたいいよね。どこの世界なのか、新宿の片隅なのか。コインロッカーの上に座ってふたりはマッチの灯をともす。幻のように消える。感傷が取り残される。
盲導犬、ガイドの犬。いや、犬はガイドなどではない、主人の言うとおりに歩むだけだ。盲導犬は街に溢れている。不服従の犬ファキイルは、私の左隣にいるかも知れない。いつ喉笛を噛み切ってやろうかと、私を見つめているのかも知れない。
ネクストの面々もすっかりカンパニーの一員。やはりこれは、と言ったひとが起用されている。水面下ではかなりの競争があるのだろう(と言えば、当初土井睦月子も出演するってアナウンスあったけど出てなかったな……)。美丈夫の松田慎也がだっさださの研修生でビックリしましたよね……また上手いんだこれが。そして小久保寿人がすごいだいじな役で!銀杏の初恋のひと。まっすぐないい子、でも無力なタダハル。むちゃ嬉しい…キュンとしたね!(本音出た)ここ数作テンション高い役が続いているけど、このひとホレイシオとかの落ち着いた役のとき使う声のトーンもとてもいいんですよね。声に思いを乗せられる、色気のある役者さんです。かつての高橋洋を思い出す頭角の現しっぷりなので、いろんな意味で注目している。次回出演作も楽しみ。応援しています。
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おまけ。
・ほんもののいぬが出ました。シェパード五匹になんかかわいい小型犬一匹。かわいかったーキャスト表にも載ってた…ってことはあの五匹+一匹には代役はいないのだ!なんか素敵、プロいぬ(笑)
・シェパードたちはちょっとおびえてた様子もあったなあ。しっぽがすっかりだらーんとなっちゃってたし。そりゃそうだよね、ハーネスひいてる人物が急に叫ぶしなんか沢山のひとに見つめられてるし大きな音が鳴るし強い光あてられるし。ごくろうさまです……
・その点小型犬はずっとだっこされたりなでられてる役だったので、ダラダラデレデレもいいとこだった。おまっそこまでだらんとしててもいいのかと思う程されるがままであった
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07月20日(土)
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