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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『私のなかの悪魔』
そして画家(夫)。歳下である負い目、才能の枯渇への不安、作家デビューした妻への嫉妬を抱え、常に怯え苛立っている。そこを教員につけこまれて…と見せかけて。教員を追い払うための夫婦ゲンカは、演技であると承知し乍らお互いを傷付けている。それが演技だと言うことは、最後迄隠しておかなければならない。難しい役どころですが、こーれーがーよかった。演じたのは高橋から煖エに改名し、久々に舞台に帰ってきた煖エ洋くん。淡々としたトーンで平易に語る序盤、「あれ、基本の声のトーンが低い」と思う。以前はもうちょっと高音だった…いやはや憶えてるものですね。落ち込んでて元気がない役柄だからかな、それともしばらく舞台を離れて、映像での芝居を身につけた上でこのトーンでいこうと判断したのかな、それとも単に歳とったからかな?などと思う。それが中盤一転、妻に対して激高するシーンはきた!これぞ舞台の煖エ洋!な声のトーン、滑舌、芯のある台詞回し。嬉しさのあまり心のなかでガッツポーズ。これが観たかった!!!しかし前述の終盤のシーンでトーンがまた低音に…そうか、教員同様こちらも二重にしてやられたんだ。私が観たかった煖エくんの演技は、夫が演じていた人物だったんだ。と衝撃を受ける。数年舞台を離れている間に、演技のレイヤーが一枚増えたんだ…これは、すごい……。うわーん素晴らしかったですよ。これを機に、またコンスタントに舞台に立ってくれたら嬉しいな。
ウエイター役の足立理さんは、四十年後も妻の世話をやく人物として登場。いいアクセントになっていました。ある意味妖精ぽい。妻も夫も教員も、老いていくのに彼だけが若い。
アドリブなのかなと思える場面も活き活きとしていて、いい座組だなと思いました。とよたさんに立ちはだかられた煖エくんが「デカッ」と言ったのに大ウケ。かわいい身長差だった……。
最近『水の音』を観たり『ビューティフル・サンデイ』DVDを観直したりして、三人芝居好きだわ〜と自分の好みを再確認したこともあり、いいタイミングでもありました。やっぱこのくらいの規模の公演がいちばん好きー。心地よい緊張感、それでいて落ち着く。
03月30日(土)
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