ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『負傷者16人 ―SIXTEEN WOUNDED』
自分は臆病者だから所謂“敵”に対して寛容なのか、そしてその寛容は忍耐と言うことなのか、“借り”と言う思いがなければ自分はマフムードにこんなにかまっただろうか?と言う揺れを終始滲ませ続けたハンスを演じた益岡徹さん。頑だった心がやわらぎ、次第にハンスを実の父親のように慕い、同時に強い思いをぶつけるマフムードを演じた井上芳雄さん。耳慣れない単語が頻発し、それに説明的な台詞がつかなかったとしても、彼らふたりの身体を通して語られた言葉たちには「ああ、あちらではこういうしきたりがあるんだな」「今はこの言葉の意味は解らないけど、何度か出てくるうちにニュアンスは判ってくるだろう」と感じられる安心感がありました。信仰、歴史が絡む習慣から、サッカーチームアヤックスが「ユダヤ人」と呼ばれる所以(劇中はっきりとは語られませんが、オランダから収容所につれていかれたユダヤ人たちが何をしたか、と言うことはうっすら伝わるようになっている)等、日本人にはあまり縁のない情報を多く含む会話をぐいぐい聴かせる力は素晴らしかったです。
益岡さんはアラブ系でもイケそうな顔立ち、井上さんは東洋系の涼しい顔立ちなので序盤ちょっとだけ「うーん、井上さんがパレスチナの…」と思ったのですが、あっと言う間に気にならなくなりました。芝居の力と言うものは重箱の隅をつつく余地を与えない強さがあるものですね。会話劇の醍醐味を見た思いがしました。そして思えば井上さんをミュージカルで観たことがないのですが、今回は歌ではないけど歌のようなもので美声を聴くことが出来ました。アザーンのシーンはもう発声が違った(笑)。
歴史を感じさせるパン屋のセット、時間経過や状況を知らせる映像演出も心に残るものでした。骨太な海外現代戯曲の上演を観る機会に出会えて幸運でした。
憎悪と暴力、復讐の連鎖についての作品を一週間で二本観ることになりました。来週観る予定の『THE BEE』について、26日の新聞記事での野田さんの言葉を最後に。
「俺にも答えは一つじゃない。救いのない芝居だが破滅につながらぬ道を我々は選べる、少なくとも見終えてすぐ暴力に走らないだろう。それが希望だと思います」。
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■芝居のチケットをとる基準はいろいろあれど
出演者や演出家、作家から興味がわく、観に行きたくなる舞台は勿論沢山ありますが、自分にとって宣美によるそれもかなり大きいものです。特にストーリーを知らない海外戯曲の日本初演を観たい場合、宣美から受け取るイメージにはとても左右されます。
『負傷者16人』のチケットを買ったのは宣美が決め手でした。新国立劇場レパートリーの宣美をgood design company(水野学さん)が手掛けるようになってから、大量に渡されるチラシ束をめくるとき、確実に手がとまるようになりました。新国立のブランディングを示しつつ、なおかつ他とは一線を画すデザイン。小林賢太郎さんとの仕事でも知られる水野さんですが、毎回独特の美学が貫かれています
・good design company | 新国立劇場
■関連メニューとかあったのだろうか
終演後ロビーに、お皿に盛られたパンが置かれているのに気付きました。「ビュッフェで販売しています」らしきことが書かれていたのですが、何かあったのかなあ。休憩時ちゃんと見ておけばよかったー。
それはともかく、目にしたパンのせつなかったこと。パンとかお菓子とか、食べものってひとを笑顔にするものであり続けてほしいものです
追記:やっぱあったんだー。そして劇中登場人物がこねた生地は焼かれて展示されていたそうです。気付かなかった……(泣)
・新国立劇場演劇『「負傷者16人 −SIXTEEN WOUNDED−」が初日を迎えました』
中日には「中日」のパンが追加展示
・新国立劇場演劇『「負傷者16人 -SIXTEEN WOUNDED-」中日(なかび)を迎えました』
04月27日(金)
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