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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■「エロ」からはじめる読書入門
 小学6年生の時の担任だった教師は、オレに志賀直哉の「清兵衛と瓢箪」という本を読めと勧めてくれた。なんでもオレはその「清兵衛」みたいな少年だからという理由である。その文庫本は短編集だったので、オレはそこに掲載された他の作品もあわせて読むこととなった。「小僧の神様」は平易な内容だったが、「網走まで」という短編はどうもそのときは意味がわからなかった。それから松本清張も勧められたので、「点と線」や「ゼロの焦点」などを読んだ。「わるいやつら」という本がものすごくエロくて母に叱られた。(オレはそのエロさもけっこう好きだった)。

 中学生の時、友人が読んでいた星新一の「ボッコちゃん」という本が面白くてSFショートショートを読みあさり、そこから本格SFも読むようになった。小松左京の「果てしなき流れの果てに」を読んだのはその頃だ。まだ中学生の頃にそんな難しいSF小説を読んでいたのである。またオレが中国の古典に興味を持ったので、母は徳間書店から出てる「中国の古典」というシリーズの本を買ってくれた。それで全6巻の「史記」を読むこととなった。白文・書き下し文・現代語訳の併記だったが、書き下し文を読みながら「それがこういう意味になるのか・・・」と理解することを楽しんだのである。高校の時の実力試験の漢文の問題で「史記」の中の知ってる文章が出てくれたおかげでびっくりするような点数がとれたこともある。

 とにかく本を読むことが大好きだったオレは、ものすごく大量の読書経験の中で知識を積み重ねていったのである。我が家にはなぜか集英社の全88巻の日本文学全集があった。その中にはいくつかエロい作品もあった。川端康成の「眠れる美女」がなぜかその中に入っていて、オレはものすごく興奮して読んだことを覚えている。人間やはり誰しもエロには興味があるのだ。オレが我が家の「日本文学全集」を読み始めたのは、その中にわりとエロい本があって楽しめたことも大きかったのである。もちろんその中の夏目漱石や森鴎外も読んでいたのだが、三島由紀夫の「憂国」なんかはものすごくエロいと思ってオレはのけぞりつつ愛読したのである。坂口安吾もその全集に入っていた。「夜長姫と耳男」や「桜の森の満開の下」のエロスの世界もオレには強烈な印象を与えた。

 こんなふうに書くとオレの読書体験がまるでエロしかなかったように勘違いされるが、エロに興味があるのは思春期の男子としてはありふれたことである。そしてエロには無関係の小説ももちろん読んでいた。濫読していたSF小説がそうだ。SFだけではなくて大藪春彦や西村寿行のハードボイルドも読んだ。その中には少しエロいものももちろんあった。

 ただ、大学受験の迫った一年間はあまり小説は読まなかった。受験勉強が忙しくてあまり小説を読む時間はなかった。ただその頃も大藪春彦の「野獣死すべし」は気に入って何度も読み返していた記憶がある。あちこちに線を引いてとても大事にしていた。オレが文学部という進路を選び、「放蕩無頼」という生き方を夢見るきっかけとなったのがその小説の影響であることは否定できない。

 ただオレは物書きとして生きることもなく、太宰治のように心中することもなく、織田作之助のように夭折することもなかった。京都大学を卒業したオレは南河内の田舎教師となって社会人生活をスタートさせたからである。そこから紆余曲折もあったが、今こうして私学教員として教壇に立っているのである。

 オレが「エロへの興味」から読書の世界にどんどんハマっていったのは事実である。しかし結果としてそれはオレの読書偏差値を高めることにつながったのである。じゃあどうすれば国語力が上がるのか。それはやっぱりエロから入るしかないのかも知れない。すべてはエロに帰着するのである。はじめて三島由紀夫の「潮騒」を読んだときに、嵐の夜にたき火をはさんで濡れた服を乾かす二人が向かい合うシーンで、読んでいるオレがどれだけ興奮したかは説明するまでもないのである。「その火を飛び越えて来い!」そんなことをしたら陰毛が焼けるのである。
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10月21日(月)
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