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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!!(14)≪前編≫

※とりあえず、3ヶ月ごと更新・・・を目標にしていたはずの(汗)榊さんシリーズです。今回は、一連の怪奇事件に一応の決着が訪れます。そして今回の話こそが、ちゃんちゃん☆ が一番書きたかったことだったりします。
 人間の強さは、腕力や剣術の巧みさだけじゃなく、いざって時に踏ん張ってどれだけ頑張れるか、ではないでしょうか。でわ、後書きにて。


***************

 ───剣術が出来ないと、弱いの?

 どこからか聞こえてくる、女童のあどけない声。

 ───弱い男の子は、男の子じゃないの?

 面前に浮かび上がるは、途切れ途切れのたわいない光景。
 貧しいながらも綺麗に整えられた部屋の中、病に伏している明らかに顔色の悪い童。
 だけど彼は、今とても幸福そうだ。目の前にいる女童に、文字の読み書きを教えているらしい。

 ───・・・そんなこと、ないよ。お夏、知ってるもの。頑張ってること。

 笑い合う子供たち。わずかに日の光が入るだけの薄暗い室内が、そこだけ暖かく見える。

 ───いつかお夏が、お嫁さんになってあげるね・・・。

 いつまでも、そんな楽しい日々が続くと信じていた彼らだったのに。





「榊さんーーーーーっ!?」
「・・・!?」

 悲鳴のような御厨さんの呼びかけで、あたしは我に返る。
 途端に自覚する、背中の紅蓮の熱さ。
 さっきまでの儚げな夢幻の世界が、まるで嘘だったかのように。

 一体、さっきの風景は何だったの・・・?
 それにあたしは、今何をしているんだったかしら・・・。

 なんて現実逃避してる暇なんぞ、どこかへ消し飛んでしまう。そう、どう解釈しても夢でも幻でもない、痛みと熱さのせいで。

「ぐぅ・・・っ!」

 ───そうだ、思い出した。
 あたしは捕り物の途中で、火の化け物に攻撃されかけた女童を庇おうとして・・・背中に炎を浴びせかけられたんだったわ!
 正直言って、焼かれた背中は半端じゃなく痛い。一瞬だけとは言え意識が飛んでたってのも、恥でも何でもなく即座に納得できる。めちゃくちゃ痛い。その場をのた打ち回りたいほどに痛い。
 だけど今のあたしには、思いのままのた打ち回ることが出来ない事情があった。

 何故なら、あたしの懐にはまだ女童が抱きかかえられている気配があったから。
 痛みのあまり、あたしは目も開けていられないんだけど、子供特有の温かみは確かに感じていたから。
 なのに、背中の炎が消えているかどうかも分からない今下手に動けば、巻き込んでしまうかもしれない。このままなら、懐に抱え込んでる状態なら、このコだけなら何とか焼かれずに助かる可能性があるのだ。

 けど、背中の熱さと来たらますます激しくなるばかり。激痛のあまり声すらも出せず、動くことも出来ず、頭の中がどうかなりそうな苦悶のまま、あたしは意識を失いかけた。

 その時だ。

『剣掌・神氣発勁ッ!!』

 蓬莱寺の声が高らかに聞こえたかと思うと、冷たい刃物を・・・そう、『村雨丸』みたいな刃物を、素肌に沿って素早く滑らせられたような涼しさを、背中に感じて。
 何故かあたしは勢い良くもんどりうって、背中から床の間に転がる羽目となった。

「・・・・・・・っ!!」

 悲鳴を上げるのは何とか堪え。
 女童を庇うため、その場に四つんばいになろうとしたあたしは、背中にほんの少しだけ、床の冷たさを覚えることに気づく。
 ・・・ひょっとして火、消えたの? さっきの蓬莱寺のワケワカラナイ術で?

「か・・・はっ・・・」

 それでもあたしは、女童を放り出すことはしなかった。
 さっきの蓬莱寺の術は、その声から察するに、どうやらあたしたちから相当離れた場所から放たれたもの。多分あたしが意識がなかったあの瞬間、炎がほうぼうに散るか何かして、《龍閃組》も《鬼道衆》も、そして御厨さんも、その炎を消すのにおおわらわになったに違いない。

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12月28日(日)
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