ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(9)後編 外法帖
※ああ、またしても前後編・・・。何とかコンパクトにまとめることは、ちゃんちゃん☆ には不可能なのでしょうか??
とにかく、本文をどうぞv
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茂保衛門様 快刀乱麻!(9)後編
「・・・もういいよ、九桐。あたしから正直に話すから・・・」
媚びているようで、その実意志のはっきりとした切れ長の目をした桔梗は、辛そうな顔を伏せたまま話を始めた。
「あんたたちの言う、勇之介を利用できないかって企んだ人間って言うのは・・・他ならぬあたしさ」
「なっ!?」
「けど、彼らを利用しようとしたんじゃないんだ。言い訳にしか聞こえないかもしれないけど。あたしはあの子があまりに不憫だったから・・・。姉さんを止められなかったことを、姉さんを助けることが出来なかったことを、悔やんで悲しんでたあのコの無念を晴らしてあげたくって・・・」
そこまで言ったところで、桔梗はキッ、と顔を上げた。
「あんまりじゃないか、あの姉弟たちは一生懸命支え合って生きて来たって言うのに。自分たちの目先の欲にかられた連中に、見殺しにされた挙げ句に言い訳もできないなんて! 弱い人間は何をされても、たとえ殺されても泣き寝入りするしかないなんて、一体誰が決めたって言うんだよ?
・・・だから、だからあたしはあたしの力をあの子に貸してやったんだ。おろくと勇之介の味わった灼熱地獄の苦しみを、他人にも味合わせてやる力をっ・・・!」
パン・・・ッ!
自分の感傷に浸ってる女の言葉なんて、これ以上聞いていたくなくて。
・・・気が付けばあたしは、桔梗に平手打ちを見舞っていた。
仕返しされるとか、あたしも呪殺されるんじゃないかとか、そんなことはその時はこれっぽっちも考えずに。
「あんたは・・・あんたは何てことしでかしてくれたのよ? 灼熱地獄を味合わせるですって? 襲われた2人の男に関しては、確かに自業自得かもしれないわ。だけど勇之介が付けた火が、もし何の関係もない人間に燃え移りでもしてたらどうするのよ!? あんたは第二、第三の勇之介を作るつもりなわけ!?」
「それは・・・」
桔梗の顔色が目に見えて悪くなるのが分かっても、あたしの糾弾は止まりはしない。
「いくら泣き寝入りが嫌だったからって、どうしてそっちの方面でしか力を貸す事が出来なかったのよ? 勇之介の声が他人にも聞こえるように、おろくの火付けを見て見ぬふりをした男たちを糾弾できるようにすることだって、できたはずじゃないっ!」
「・・・・・・・」
黙りこくった桔梗の代わりに、あたしたちの間に割って入ったのは血の気の多い風祭。
「何言ってやがるんだよ。大体お前らお役人が不甲斐ないから、おろくも勇之介も苦しむ羽目になったんじゃねえかっ。糾弾するくらいで勇之介の無念が晴らせるかよ? 糾弾したからって、火あぶりにされたおろくが生き返るのかよっ」
「勇之介は極楽浄土へ行けるでありましょうか───おろくはそう言ってたのよっ、火あぶりにされる前にねっ!」
「・・・っ!」
「おろくはねえ、自分のしでかした罪を悔いながらも、死した勇之介の身を案じていたの。・・・分かる!? あんたたちが余計なことをしたお陰で、可哀想な勇之介は極楽浄土にすらいけなくなったのよ? あんたたちはおろくの優しい姉心も踏みにじった挙げ句、あるいは勇之介ですら望んでいなかったかもしれない復讐を、強いたかも知れないってことじゃないっ。
・・・見損なったわ《鬼道衆》。あんたたちはやっぱり、鬼でしかないのよっ!」
さしもの風祭も言葉を失い。
「分かってるよ・・・あたしのやらかしたことがどんなに一人よがりなことだって事は、嫌ってほど分かってるさ。・・・だから今、止めにきたんじゃないかっ」
涙の交じった声で桔梗が呟くのを、あたしはなかば歯ぎしりしながら聞いていた。
ったく! だから女って奴は嫌いなのよ。すぐ感情で揉め事起こして、周りなんて見えてやしないんだからっ!
───と言っても、これ以上感情論をぶつけ合ったところで、問題が解決するわけじゃない。
「・・・・・」
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07月22日(月)
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