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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(9)前編 外法帖
※気が付けば2ヶ月以上、間空いちゃってましたねえ(汗)。その間にも、6月某日には茂保衛門さんの誕生日が来るわ、律義な坪井さんがわざわざ「来楽堂」においでくださるわ、いおりんさんもご自分のHPにて榊さんSS書いて下さるわ、で、結構忙しくも楽しかったですけど。
さて今回の話にて、絶対避けて通れない辛い真相が明かされます。当事者と第三者それぞれの言い分・・・それらは決してどちらも間違っているとは言えないんですよねえ。結果がどうあれ。難しいです。
では本文行きます!
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茂保衛門様 快刀乱麻!(9)前編
「《鬼道衆》、だと・・・?」
自分の発言が失言だってあたしが気づいたのは、御厨さんがうめくように呟く声を聞いた瞬間。
───マズい、マズいわよコレはっ! 一体どう言い訳すればいいのっ!?
でも、てっきり堅物な部下から追及されるかと思いきや、彼の険しい視線は奴ら、《鬼道衆》3人に釘付けになったきり。
・・・どうやらこの唐変木、目の前の緊急事態にめいいっぱいで、あたしが口にしたことをこれっぽっちも不審には思わなかったらしい。
やれやれ、と胸をなで下ろすあたしに御厨さんは気づきもせず、いつも通りの生真面目さを発揮する。
「貴様たち・・・まさかここに来たのが偶然、などと戯言を言うつもりではあるまいな? 何を知っている?」
「何、とは?」
「とぼけるな! ここで起きた・・・ムゴッ!?」
でも、詰問を続けかけた御厨さんの口を、あたしはとっさに後ろから手を伸ばすことで塞ぐ。
ゴメンナサイね。でもここで真っ正直なあんたが何言ったところで、状況は進展しないと思うのよ。
「ここで起きた・・・何だと言うのだ?」
白々しくも僧装の男がそう尋ねてくるけど、あたしはもちろん信じやしない。
こうなったら賭けだわ。こっちは《鬼道衆》の企んでることなんかみーんな分かっちゃってる、ってフリをして、向こうがどんな反応を見せるか確認してやる!
《鬼道衆》の方へとゆっくりと一歩踏み出したあたしは、余裕を装って口火を切った。
「・・・知らん振りするのはよしましょうよ、お互い。あたしたちにはとりあえず分かっちゃってるんだから。
例えば・・・ここで焼け死んだ、火付け犯のおろくの弟・勇之介が、あまりの無念ゆえに成仏できずに迷っていたとか。彼がここで火事に巻き込まれた本当の真相は、おろくの凶行を止めに来たにもかかわらず、目の前の保身に目が眩んだ2人ばかりの男たちに殴られて気絶させられた挙げ句、置き去られたせいだとか。
・・・で、彼ら姉弟の怨みをこの際、幕府の足元を揺るがせる材料として利用できないか。そう企んだどこかの誰かさんが、復讐する術を何も持たなかったはずの勇之介に、呪殺の手ほどきをしたとか。そしてめでたく、先述の2人を呪いの炎で殺すことに成功し、世間を恐怖に陥れることに成功しつつある、とかね・・・」
あたしの言葉にあいにく、サッと顔色が変わったのは風祭と、桔梗、と呼ばれた女の方だけ。
肝心要の僧侶? は少し眉をひそめただけである。
「ほう、それは興味のある推理だな。・・・だが、いわれのない嫌疑をかけられるのは正直言って、迷惑極まりない。何の証拠もないのに言い掛かりを付けるのが、ひょっとして火附盗賊改のやり口なのか?」
・・・どころか、いけしゃあしゃあととんでもないことまで言う始末。
フン。こっちもそう簡単に口を割ってくれるとは思ってませんけどね。引っかけるにはもっと大きいエサが必要みたいだわ。
だからあたしは、少々悩ましげな目をして男に擦り寄ることにしたの。
「まあまあ、そんなに目くじら立てなくたっていいじゃないですか。あたしは取り引きをしようって言うんですよ」
「・・・取り引き?」
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07月21日(日)
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