ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(10) 外法帖
※ほとんど隔月間化している(隔月間どころじゃねえだろ☆)、と言われても仕方ない状況の、お久しぶりの「茂保衛門様〜」であります(汗)。でも、忘れてるわけじゃないんですよ? いくらワンピに浮気しようが、時々他のゲームのプレイ日記を挟もうが、榊さんはちゃんちゃん☆ にとって、『剣風帖』の伊周ちゃんとはまた違った意味で、思い入れがあるキャラですんで。
 で今回でありますが・・・キャラの大暴走、とはこう言うことなんでしょうねえ。当初この話を考え付いた時は、よもやこんな大胆なことを榊さんがやらかすとは、思いもよらなかったです。ハイ(汗)。まあこの方法でしか、榊さんたちが《鬼道衆》を撒くすべはなかったわけですから、仕方がないと言えばそれまでですが。
 いよいよ話は大詰め。怒涛の新展開と相成ります。では。

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茂保衛門様 快刀乱麻!(10)


 正直言って、あたしはあんまり足の速い方じゃない。
 とりあえず(内股走りの)逃げ足は速い、って、他の与力たちにからかい混じりで言われてるけど、そりゃ誰だってそうでしょ? 命がかかってるともなれば必死で走るんだからさ。

「さ、榊さん、一体、いきなり、どうなさったんですかっ!?」

 そんなわけだからいくら前を走っていても、言わば体力バカの御厨さんにはすぐに、追いつかれちゃう。
 それでもあたしは足を休めない。
 御厨さんも、理由は聞かされていないものの、緊急事態だってことだけは勘付いてくれたんだろう。走りながら声をかけてくるのも質問だけで、一切苦情は口にしないのは有り難いことだわ。
 後ろから彼以外の足音が聞こえてこないことを確認してから、あたしは事情を説明することにした。もちろん、走りながら、よ?

「さっきの、桔梗って女の話聞いて、御厨さんには心当たりがないんですかっ?」
「心当たりって・・・」
「『行商人』『預かる』。そして『首から何かをぶら下げていた』よ!? 夕刻、与助から聞いた人間の、特徴に、該当するじゃないですかっ、被害者候補の、特徴とっ!」
「・・・・・! 油売りの行商人ですかっ!? 赤いお守り袋を身に付けていたと言う!?」
「そうっ! 殺された又之助たちって、当然、火事の直前に、小津屋へ向かってたはずじゃない? 彼らに、油売りは、勇之介を『預けた』のよっ。
だ、だけど、火事の後で、勇之介らしき子供が、焼け死んだって知ったら? 当然、食って掛かるんじゃないですかっ」


『そんなつもりであんたに預けたんじゃなかったのに!』


 ───そうだ。
 確かにその油売りは偶然見たのかもしれない。小津屋から火の手が上がる前に、又之助と久兵衛が引き上げて来るのを、行商中に。
 そしてあるいは、何の気なしに尋ねたかもしれない。
「あのボウズを届けて下さいましたか?」ぐらいは。
 ・・・だから又之助と久兵衛は彼の存在を、あたしたち火付盗賊改に告げたのだろう。図々しくも、自分たちの『身の潔白』を証明するために。

 だけどそのうち彼は知ってしまった。姉の凶行を止めるべく、病をおして駆け付けた弟がいたことを。そして紛れもなくその少年が、自分が又之助たちに託したあの少年だということを。
 さぞや彼は愕然としただろう。そして憤然としただろう。与助が耳にしたと言う又之助との諍いは、きっと彼の義侠心の表われに違いない。

 ・・・でも、彼の商いが油売りだったことがあるいは、彼の不運だったとしたら。
 もし又之助が久兵衛やその奥方を脅したのと同じ形相で、油売りを脅したとしたら?
 例えば、こんな風に。

「あんたが忙しさにかまけず、最後まで責任を持って小津屋へあのガキを届けていたら、あの火事は起こらなかったってことじゃないか。あんたにも責任はあるんだよ、あのガキが焼け死んだ責任はね。・・・へっ、お笑い草だねえ。油売りが火事を招いたなんて世間様に知れたら、商売上がったりどころの騒ぎじゃないんじゃないかい?」

 ───自分が罪を逃れるためなら人は、どんなに残酷で卑怯なことでもしかねない、って話。

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09月17日(火)
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