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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(8) 外法帖
*CDドラマ「妖鬼譚」後編、聞きました〜♪ いやー、榊さんがことのほか喋ってくれちゃったんで、満足満足v あいにく活躍の場こそありませんでしたが、御厨さんを諭すセリフが名文句だったので、宜しいのじゃありませんか?【喜】
しかーし、それで尚更困ったと言うか、好都合と言うかの状況になっちゃいましたわ。結局「妖鬼譚」では御厨さんも、●●●の正体については知らぬ? まま。なので、この「茂保衛門様 快刀乱麻!」が「妖鬼譚」の後日談と言っても、(多少の矛盾を除けば)不自然じゃなくなったんですもんねえ。設定どうしよう・・・思い切って「妖鬼譚」の後の話ってホラ吹いちゃおうか(苦笑)。
で、今回はその●●●が登場しますっ! 「●●●」が何かは、読んでからのお楽しみ♪ でわっ!
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茂保衛門様 快刀乱麻!(8)
あたしは、無力だ。
───別に自分が、この世の全ての人々の生活を守ることができる、なんてうぬぼれているわけじゃない。
だってそんなことは不可能に近いもの。大体、各々の幸せって言うのは必ずしも皆同じじゃないし、その事実こそが人が人たる由縁だから。
そういうわけで、あたしは自分が極めて『無能』だって自覚はあるのよ。人には出来る事、出来ない事があるってことも。
でも、だからって。
自分の力じゃどうにもならない壁に突き当たった時、「ああやっぱり自分には無理だった」なんて、いつもいつもお利口さんに納得できるわけじゃない。
歯ぎしりしたくなるほど悔しくて、だけどどうしようもない憤りを腹の中にため込んで悶々としてる、なんてことはザラだわ。
きっとこういう心理状態の時なんでしょうね。あたしがあんな夢を見るのは。
剣術も、妖術も使いこなせる、万能で優秀な与力として活躍する、夢・・・なんて、見るだけ空しいのが分かってるのにさあ。
とりあえず───ついさっき仮眠を取ったばかりで、しばらく起きているつもりの今のあたしには、夢の世界に逃げ込む術(すべ)も暇もない。
だから他の事で気分転換するのが、一番健康的な欲求不満解消法なんだけど・・・お気に入りの長命寺へ足を運ぶには、少々遅い時間よねえ。
「ちょっと出掛けて来ますよ」
街の巡回でもしようと、用意させた雪洞に手を伸ばしたあたしだけど、横合いから素早く奪われてしまう。
「・・・ご一緒させていただきますよ。例え近くまでと言っても、このところ1人では物騒ですから」
生真面目な御厨さんの仕業だった。
まあ・・・通常武士はどこへ赴くにしても、必ず供を付けているものだから、別段おかしくはないんですけどねえ。過保護、とか、心配性、とかいった単語が、さっきから頭の中を飛びかってしょうがないわ。
「勝手になさい。念のため断っておきますけど、吉原には寄りませんからね。どちらかと言うと殺風景なところへ行くつもりですから」
「・・・そこでどうして吉原って言葉が出るんですか」
「ああら、お凛のと・こ・ろ、って言い直した方がよかったかしら♪ おーっほほほほっ♪」
「さ、榊さんっ!!」
純情唐変木な部下をからかうことで、多少は気が紛れ。
あたしはてくてくと夜の街を歩く事にした。
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夕闇が押し迫ってくる時刻ともなると、通りにも人はそんなに見掛けない。そして数少ない通行人は皆が皆、雪洞を手に持って歩いてる。このところ物騒だから、尚更ね。
みんなが家路に、そして色街へと急ぐ中、あたしと御厨さんはどこかしら人寂しい方向へと足を進めていた。
上司のあたしが喋らないものだから、ずっと押し黙ったまま後をついて来ていた御厨さんだけど、そのうち周囲を見渡しながら尋ねて来た。
「・・・ひょっとして、榊さんが今行かれようとしているのは日本橋、ですか? それも、小津屋の焼け跡の」
さすがと言うか、上司の思考傾向をよく把握してるわね。
「ま、そんなところですよ」
「どうしてまた。事件の事で何か、気になる事でもおありになるのですか?」
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05月19日(日)
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