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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(3)−1 外法帖
*「外法帖」の火附盗賊改トリオ以外、全然出て来ないとヤキモキしておられる方。心配する事はありません。実はちゃんちゃん☆ もなかなか「外法帖」メインキャラを登場させられないので、ヤキモキしてる最中であります(苦笑)。出したいのはヤマヤマなんですけどね、とりあえず「謎解き」モードにしている以上、伏線を張らない限り話を先に進められないもので・・・。ああ、やっぱり長丁場みたいだなあ。CDドラマ発売までに、せめて「推理編」へ到達できればなあ、と思ってますけどね。(ちなみに今のはまだ「事件編」)
でわ。
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茂保衛門様 快刀乱麻!(3)
───そうして。
正式にあたしたち(火附盗賊改)が今回の事件を引き受けたその日のうちに、焼死体の身元が判明したわ。
元々着衣等から裕福な町人だろう、ってことは見当がついていたんだけど、何とか燃え尽きずに焼け残っていた薬籠(やくろう)の細工が、きっかけになったの。
どうやら男は浅草の小間物問屋、岸井屋の主・又之助。飼い猫に一月前引っかかれた爪痕が顎の辺りに残っているはずだ、との申し出があって、それが決定的な証拠になったってわけ。
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とりあえず死体を引き取ってもらうためと、被害者が日頃怨みを買うような人間だったどうかを確かめるべく、又之助の妻と小間物屋の番頭を役宅へ呼び付けることにした。
彼らはまるで落ち着きがなかったわ。・・・ま、それはそうでしょうね。ここは「送られたら白状しない限り生きて出られない」なーんて皆から怖がられている、噂の火附盗賊改方役宅だもの。それに、もともとあたしたちって町人とは縁が薄いはずなのよね。町民が普通に暮らしてれば、呼び出されるとしても町奉行所の方だから。
加えて、どうやら又之助と思しき人間が焼け死んだ、なんて聞かされてご覧なさいな。生きた心地なんてしないに違いないわ。
とりあえず死に顔を確認してもらうことになったんだけど。
たまたま他の人が出払ってて、あたしと御厨さんだけが立ち合うことになっちゃって。死体にかけられた筵(むしろ)を御厨さんがめくり上げたと同時に、あたしは視線を逸らして廊下へと出た。
まあ、家族の悲惨な泣き声とかを聞きたくない、ってこともなくはなかったんだけど・・・どうも事件当時のことを、思い出しちゃうのよね。あの時の焼け爛れた人間の匂いとか、生々しくもおぞましい色合いとか・・・そう言ったのが、さ。いくら仕事で見慣れてるったって、さすがに焼け死んだ直後の死体、って言うのはそうそうお目にかかった事なかったから。あの時ぐらいよ、はっきり言って。
これじゃあしばらく御飯とかまともに食べられないじゃない、って吐きそうになってたら、どうしてだか御厨さんまで部屋から出てきたの。
「・・・ちょっと御厨さん、あなたまで彼らから離れてどうするつもりなんですか?」
遺族に気を遣ったのかもしれないけど、あまり感心できることじゃない。そう思って意見したら、彼はあたしの耳元で小声で言ったの。
「榊さん、あの番頭の男なんですが・・・以前この近くでうろついているのを、見掛けたような気がするんですよ」
「・・・何ですって?」
あたしは気配を伺いながらも、御厨さんを引っ張って部屋から遠ざかる。
部屋からはひそやかに、女房の泣き声が聞こえ始めた・・・。
「いつなの? それは」
「確か一月ぐらい前かと。私が見回りに出た時に、こちら(役宅)へ歩いて来た者があの男に良く似ていたような気が」
「それはおかしいわね・・・」
さっきも言ったけど、普通町人が用事があるのは町奉行所の方なの。放火とか、押込み強盗とかに遭ったことでもない限り、あるいはその下手人でもない限りは、ここへ来る用事なんてありえないはず。
ひょっとして今回の事件に関わりがあるのかも───そうは思ったけど、単刀直入に尋ねて口を割るとも思えないでしょ。だからとりあえず、又之助の話を聞くことで様子を見るってことに、御厨さんとも意見が一致したわ。
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03月15日(金)
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