ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■過ぎし夢 来たる朝(2)外法帖・天戒×女主?
*ちゃんちゃん ☆は「外法帖」のPLAY順は「陽→陰→邪」でした。ですからこのSSは、そういう話の展開が前提になっています。よもや「陽」ラストがあのような衝撃シーンだとは思わなくて、当時は「やめてくれええええっ!」と心の中で叫びまくってました。・・・それが、この物語を書くきっかけになっていると言っても過言ではないでしょう。
もしこれから「陰→陽→邪」でPLAYするとすれば、また違った話が思い付くのかもしれません。でもこの話は、どうやら天戒サン相手でないと出来ないと思います。
 ・・・全くの余談ですが、今回魔人用語を登録していないPCで「外法帖」と入れようとしたところ、「下包丁」と言うおマヌケな変換をしてくれました。ああ・・・殺伐としているようなほのぼのしてるような・・・☆

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過ぎし夢 来たる朝(2)外法帖・天戒×女主?


 明け方に見る夢は、正夢になるという・・・。


「悪夢・・・?」
「ええ。・・・天戒殿には確かに感謝してます。具合の悪いオレを気にかけてくださって、桔梗にも色々と言って下さってたみたいで。・・・だけど、所詮は夢の話ですから、オレ自身でさえどうしようもないんですよ。どうやら呪詛とか、そんな類のものでもなさそうですし」
「・・・呪詛されるような覚えでもあるのか? 龍斗」
「もののたとえですよ。まあ・・・オレの知らないところで、変な怨みぐらいは買ってるのかもしれないけど」
 だから、もう気にしないで下さい───そう、言外に宣告しているのが分かるから、天戒の胸は痛む。


 ───不意に思い出す記憶。
 昨日、用があって桔梗を屋敷へ呼んだ時、たまたま龍斗は席を外していた。
 それ故だろう。桔梗は声を潜めて天戒に報告したのである。

『あたしも昨夜、いえ、今朝方気がついたんですけどね。どうやら龍斗は夜な夜な、嫌な夢に魘されているらしいんですよ、天戒様』

 女同士と言うことで、彼女と龍斗の寝室を同じ部屋にしておいたのだが、今回は功を奏したようだ。

『それもかなり悲惨な夢みたいで、今朝もそれであたしも目が覚めたほどなんです』
『・・・どのような夢なのか、分かるか?』
『断片的には。誰かに殺されそうになってるみたいことを、口走ってましたよ。殺すな、やめろ、殺さないでくれ=E・・そう、泣きながら叫んで。
・・・あんな声、できたらもう、龍斗の口から聞きたくないですよ・・・』


 確かに、龍斗が今し方見た夢がそれと同じなら、彼女が日に日にやつれて行く理由も分かる。悪夢の気配を少しでも拭い去りたいと、水を浴びに那智滝へ赴いたのも。
 ───それなら尚更、捨て置くわけにはいかないではないか。

 その思いが。
「じゃあ、これで失礼します」と立ち去ろうとする龍斗の腕を、思わず掴ませていたらしい。
「天戒殿?」
「まだ手は冷えているようだな。氷のようだ・・・これではなかなか眠れまい?」
 多分龍斗は、嫌な夢を見るくらいならと、朝まで起きているつもりなのだろう。そうと気づいて天戒は、1つの提案を持ち出すことにした。
「実は俺も、目が冴えて眠れぬのだ。よければ、酒など付き合わぬか?」

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 いつもの龍斗なら、おそらくは恐縮してこのような誘いには乗らなかっただろう。
 ただ、今の彼女には眠れないと言う、深刻な自覚がある。体調が最悪だと言うことは、いざと言う時に機敏に動けないことを意味するのだ。そのような人間が、果たして鬼道衆にいてもいいのだろうか───? 律義な彼女のことだ、そのくらいは考えているに違いない。
 それに、自分の行動で天戒の安眠を邪魔して悪かった、と言う思いもあったのかも知れぬ。
 とにかく天戒は、初めて夜の自室に龍斗を招き入れることになった。

 皆が寝静まっているので、給仕を誰かにやらせると言うわけにもいかない。それで、こっそりと台所から酒を持ち込んでの酒盛りと、相成る。

「子供の頃を思い出すな・・・」
 知らず知らず、天戒の口元が笑みで緩む。

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02月24日(日)
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