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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(7)−1 外法帖
「小銭だけを取り出して水ででも洗い、巾着袋やその他のものは埋めるなり、焼却してしまえば証拠は隠滅できるではないですか。小判ならともかく小銭なら、使ってしまえばまずアシはつかないでしょうしね」
さすがに犯罪を促進しそうな話題は、御厨さんだけに聞こえるような声音で言ったけどね。
「・・・確かに」
御厨さんも、あたしの鋭い観察眼に頷いているうちに、いつもの冷静さを取り戻しつつあるみたい。
「じゃあ、一体これは何なんで?」
「それをこれから調べるんですよ、与助。・・・あなた、スミマセンがこの2人を岸井屋まで、送っておあげなさいな。もう夜は遅いことですしね」
あたしはそう口にする事で、この話題を打ち切ることを暗に提案した。
むろん巾着袋のことは、誰にも口外しないように言い含めて。
そうして、岸井屋の親子を帰そうとして、あたしはふと息子の方を呼びとめる。
「・・・そこの坊主、あなた随分威勢がいいみたいね。そんなにおっかさんのことが、大事?」
揶揄するようなあたしの言葉に、思った通り息子は引っ掛かった。
「あったりまえだろ! 母上は俺が守ってみせるんだ!」
まあその心意気は頼もしいことだわね。実現できるかどうかは、別物だけど。
「それが盗賊とか、ならず者相手でも?」
「そうだ!」
「ふうん、それでその威勢の良さで、父親ともちょっとしたケンカをしたって事?」
「・・・何だよ、それ」
「だってあんたの父親の顎に、爪で引っかいたような跡があるじゃない。アレ、あんたが取っ組み合いの喧嘩でもした時に、うっかり爪を立てたんじゃなくって?」
「はあ? どうして父上と喧嘩しなきゃいけないんだよ。俺大好きだったのに。それにアレって、ミケにやられたんだろ? 父上が自分で言ってたぜ?」
「あら、そうだったかしら。ごめんなさいねえ、あんたが喧嘩腰にあたしを睨み付けるもんだから、てっきりアレもその名残だったと勘違いしちゃったのよお」
「何だとお・・・!」
息子は今にもつかみ掛かってくるような形相になったけど、母親と御厨さんに止められて渋々怒りを納めるのだった。
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(7)−2に続く・・・
04月26日(金)
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