ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(3)−1 外法帖
 人の弱みに付け込んで無理矢理妾にさせられた今までの怨み、そして今、女としての自分を侮辱された怨み───そんなものが積もりに積もってついに我慢も限界に来たおろくは、発作的に火を付けちゃったのよ。
「だったらお前も、身一つで寒空の下に放り出される気持ちを思い知るがいい!」って・・・ね。

 ───だけど本当に悲劇だったのは、彼女の弟が姉のそんな気持ちに、うすうす勘付いていたらしいことだったの。
 おろくが小津屋に火を付けた後、仮住まいの長屋へ戻って来てみれば、大切な弟の姿がどこにもない。病気の身では外へ出かける用事もないはずなのに、と途方に暮れていたら、弟の友達でおろくも顔見知りの子供が訪ねて来て、こう言ったんですって。
「勇之介ちゃんはどこ? 姉上様が帰って来てるってことは、勇之介ちゃんは姉上様を止める事が出来たんでしょ? 一緒に帰ってきたんじゃないの?」
 ───むろん、勇之介って言うのは弟の名前よ。
 弟の友達の何の気なしの言葉で、おろくは全てを悟ったの。・・・そう、姉が大それた事をする前に止めようって、勇之介は病身を押して家を出たって事を。そして行き違いになったばかりか、おろくのつけた火で焼け死んだかもしれない、ってね・・・。

 全てを神妙に打ち明けたおろくは、最後にこう、尋ねたって言うわ。
「私が地獄へ落ちるのは当然でありましょうが、弟は、勇之介は極楽浄土へ行けるでありましょうか? それだけが、心残りでございます」
 それからほどなく、おろくは火あぶりの刑に処せられたわ。


 え?
 姉弟の悲劇は分かったけど、それがどうやって岸井屋に繋がるか、ですって?
 ・・・ま、それはおいおい教えてあげるわ。


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※・・・スミマセン、文章の量が多すぎてエラー起こしたので、2つに分けます(汗)。こんなの、ちゃんちゃん☆ぐらいだろうなあ・・・。

03月15日(金)
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