ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■忘るる事象について、いくつかの報告(2)
夜一の質問に、ほのぼのしかけていた空気が少しだけ、強張りかける。
「夜一さん、今更何を・・・」
「気になることがあっての。どうなんじゃ? 朽木」
「は、はい・・・あいにくと、その・・・」
ルキアはコンの方にチラリ、と目をやり、すぐに逸らす。
───そう言えば、俺の名前は口にしていた気がするけど、コンのことは呼んでなかったような・・・。
そりゃ気まずいだろう、と思いつつも一護は、ここで下手を打てば薮蛇になりかねないので、夜一の次の言葉を待つことにした。
「ふむ・・・じゃったら尚更、ワケが分からんのお・・・」
「だから何がだよ? 夜一さん」
「儂は時々猫の姿になっておるから、経験済みなのじゃがな。普通人間も死神も、自分の縄張りに自分の知らぬ存在がおれば、追い出しにかかるじゃろう?」
いきなりの話題変換に、さすがの一護もついていけない。勿論コンは、まるで他人事のように首をかしげている。
「ええと・・・?」
「じゃから、例えばの話じゃ。野良猫が部屋にいつの間にか居座っていたら、普通は気味悪がるものじゃろう? 儂もよく現世で、日当たりのいい庭に入り込んで居眠りしておったら、血相を変えて追い返されたものじゃ」
「・・・まあ、それは確かに」
「隊長だったら、自分の昼寝場所を横取りするな、って怒りそうですよね?」
「松本・・・後で覚えてろ・・・」
「で、それが何だってんです?」
浮竹や日番谷、恋次たちが何となく会話に割り込むのを見計らったかのように、夜一は今度は一護に向かって問いかけた。
「一護は今回、どうしてコンを追い出そうとしなかったのじゃ? と聞いておる」
「・・・・・はあ!?」
「喜助に聞いたぞ? お主も一瞬、朽木のことを忘れかけたのじゃろう?」
「だから、それが何でこいつを追い出すってコトに・・・」
「鈍い奴じゃのお・・・そもそも改造魂魄のコンは、お主と朽木のお陰で命を永らえたのじゃろうが。つまり、朽木の存在を抜きにして、こやつのことは語れぬはずじゃろう?」
「・・・・・!?」
おぼろげながら、夜一が何を言いたいのか分かったらしい。コンは彼女の胸に抱かれたまま、表情を固くする。
そんな彼を宥めるかのように、夜一は頬擦りをしながら尚も続けたのだった。
「見かけによらずお主は優しい男のようじゃが、さすがに正体不明の喋るぬいぐるみを自室で見つければ、妹たちの安全も考えて、追い出すのではないのか? じゃから疑問に思うての。
・・・ひょっとして一護、お主は、朽木の記憶を刈られたくせに、コンのことはずっと忘れずにいたのではないのか?」
だから追い出すなど、考えもしなかったのだろう───?
時に野良猫のふりをする、この貴人はそう問いかける。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、夜一サン」
先ほどまで、一護が夜一の裸を見たことを根に持っていた浦原が、慌てて口を挟んだ。
「それはさすがに、ありえないんじゃないっスか? だって技術開発局々長だったアタシですら、コンさんのことは完璧に忘れてたんですよ? なのに・・・」
「・・・いや、確かに夜一さんの言ってる通りだ」
一護は少しだけ思い出すような仕草をしていたが、驚くほどスッパリと断言する。
「さっきまでならともかく、現世ではコンのこと、俺は忘れた記憶はねえ」
「・・・なーに気取ってやがんだよ、一護」
が、それに異議を唱えたのは、他ならぬコンだったことが一同を戸惑わせた。
「別に忘れてたって、俺は気にしてねえんだぜ? そんなの小せえことだろ。てめえが姐さんのこと忘れてたことに比べれば」
「そんなんじゃねえって」
「大体てめえ、あの時俺のコトまともに名前で呼んでなかったじゃねえかよ? てめえが俺の名前をハッキリ呼んだのは、一旦寝てたところを叩き起こしやがった、あの時からだ」
「あのなあ、そんなのお互い様だろうが。少なくとも浦原商店へ行くまで、てめえ俺のことちゃんと名前で呼んでたか? ルキアのことですら『姐さん』で済ませてたろうが」
「うっ☆」
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12月25日(木)
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