ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■いつか来たる結末、されど遠い未来であれ(3)
俺に追いすがったルキアが、俺に向かって懸命に訴えてくる。
「浦原のところへ向かったと言うのなら、まだ望みはあるのだ、だから冷静になれ!」
「望み? 望みって何だよ?」
「浦原が何も言わず、何も聞かずにコンへ、記換神機を手渡すことなどありえぬ。必ず理由を聞き出しているはずだ。それに、単に死に場所を求めるつもりなら、あいつは絶対浦原の元へなど行かぬ! 思い出せ、あやつは浦原に、一度破棄されかけたではないか! わざわざあの時の恐怖を、再び味わいに行くはずがなかろうが!」
走りながらも、絶えず辺りの気配を拾い上げる。あるいは浦原商店へ到達する途中で、あいつが行き倒れているかもしれないから。
「だからもし本当に浦原の元にいるのなら、それは全然違う理由になる」
「何だよ、その全然違う理由って!」
「治療だ! 浦原はあれでもかつては、改造魂魄を開発した技術開発局の長だったのだ。改造魂魄の仕組みを知っているのなら、延命治療が可能やも知れぬ! いや、きっとそうに違いない!」
そう断言しながらも、ルキアの横顔は今にも泣きそうだった。
「一護・・・」
「何だ」
「私は・・・コンにどう詫びればいい?」
「ルキア・・・」
「そんなつもりはなかったのだ。あやつに最後通告をするつもりなど、これっぽっちも。私はただ、せめて残された人生をせいいっぱい生きて欲しいと、そう言いたかったのだ。だから、そのための覚悟を持たせてやりたかっただけだった。なのに・・・」
ルキアの思いやりは、決して間違ってはいなかったんだろう。俺としては、納得出来ない部分もあるけれど。
だが、もし俺が同じくルキアの立場だったら、何かあいつに気の利いた言葉をかけてやれただろうか?
せっかく破棄処分を逃れ、せいいっぱいに生きていたコン。
けれど俺は徒(いたずら)に、いつか必ず来るあいつの寿命を、ほんの少し先へと延ばしてやっただけに過ぎないんじゃねえのか・・・?
俺もルキアも瞬歩を使っていたから、本来ならそれほど移動時間はかかっていないはず。だが、浦原商店の建物が見えてきた時には、まるでやっとの思いで長旅から帰って来たかのような錯覚に陥っていた。
はやる気持ちを抑えつつ、上空から一気に店先へと舞い降りる。が、俺は即座に店内へと駆け込もうとした自分の体を、思わずたたらを踏んでその場にとどめていた。
「───いらっしゃい。黒崎さん。朽木さん」
何故なら、浦原商店の店長にして、元技術開発局々長・浦原喜助が、まるで、俺たちの到着を待ち構えていたかのような風情で、店先に立っていたから。
「浦原!」
「浦原さん!」
「随分遅かったじゃないっスか、お2人とも。コンさんを探して、ここへ来られたんでしょう? 折角アタシがあれこれと、手がかりを残してあげたって言うのに」
「手がかりだと?」
「そうっス」
飄々としたその態度からは、何を考えているのか全く伺えねえ。
「だって、良く考えてみてくださいよ? タダでさえ自由になるお金が少ないコンさんが、代わりの義魂丸だの、記換神機だの買えるわけ、ないじゃないっスか」
「なっ・・・・・!?」
「あなたがもう少し、彼の体調に気を払ってくださっていれば、こんなことにはならなかったんですよ? 黒崎さん。
もっとももう・・・今更何を言っても、仕方のないことっスけどね・・・」
え・・・?
何だと・・・?
今、浦原さんは俺に対して、何を言った?
混乱して頭がぐらぐらする。両足が、地に付いている気がまるでしねえ。
「仕方ないとは、どういう意味だ、浦原! まさか、まさかコンがっ・・・!」
動揺のあまり口も利けねえ俺に成り代わり、ルキアが血相を変えて浦原さんに詰め寄る。
が、彼は淡々とした口調で、義務的に俺たちへと告げたのである。
「・・・亡くなりました」
≪続≫
12月03日(水)
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