ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■いつか来たる結末、されど遠い未来であれ(4)


「・・・亡くなりました」


「「・・・・・・っ!?」」



























































































 が。

「・・・・・って言ったら、信じます?」

 その数秒後、まるで先ほどまでの緊張感を忘れたかのような能天気な声が、浦原さんの唇から飛び出す。

「・・・・・は・・・?」
「信じます、って・・・」

 まるで馬鹿の一つ覚えみたいに、鸚鵡返しにしか言葉を発することが出来ねえ俺たちを嘲笑うかのように、浦原さんはにっこり、と唇を歪める。ご丁寧にも、懐から取り出した扇子をヒラリと広げながら。

 ───言われた意味を、おぼろげながら理解するのに数秒。そして、からかわれたと察するのに、更に数秒を要し。

 気がつけば俺は怒りに任せて、浦原さんの胸倉をあらん限りの力で掴み上げていた。

「ってことはてめえ! コンは無事なんだな!」
「ええ、とりあえずは。今治療の真っ最中っスよ。ほら、こうやって、ね?」

 彼が懐から取り出したのは、小さな蓋付きの瓶。
 その中には透明で粘り気のある液体が8分目ほど入れられていて、更にその真ん中辺りに───見覚えのある、義魂丸に似た球体の改造魂魄が、ゆらゆらと浮かんでいた。

「特別コーティングを施してるところっス。よっぽどの無茶でもしない限りはこれで当分、壊れずに済むでしょう」
「あ・・・・・・」

 緊張の糸が切れたのだろう。ルキアはその場で、腰を抜かしたようにうずくまる。
 が、あいにく俺も気持ちに余裕がなかったもんだから、彼女のことなど構っていられなかった。

「タチ悪いぞ! この状況でそういう冗談、口にするんじゃねえっ!」

 コンの奴が死んでしまったかと、早合点しちまったじゃねえか! 俺がそう憤るのも、無理はないだろう。

 が、ヘラヘラと笑っていたのは、そこまで。
 浦原さんは急に表情を変えると、逆に俺の胸倉を思い切り掴み上げた。

「あなたに・・・そんなことを言う資格があるんですか? 黒崎さん」

 帽子の下から現れたのは、明らかに怒りの両眼。その容赦のない殺気に、俺は思わず浦原さんから手を離していた。

「もしコンさんが、アタシを頼らず治療も受けずにいたら、さっきの宣告はまさに現実になっていたんですがね? 正直、間一髪のところだったんスよ」
「・・・・・っ!」
「思い出して下さい。アタシは一度は、霊法の名の下に彼を殺そうとした。下手をすれば、これ幸いと再び廃棄するかもしれないのに、どうしてコンさんがアタシに相談を持ちかけたのか、分かってますか?
他には誰も頼ることが出来なかったから。そ、たとえ黒崎さん、あなたにすら、ね」

 ───そう、だ。その通りだ。
 もしルキアが、たまたま真央霊術院で改造魂魄の実験報告書を見つけていなかったら、俺はコンの異変には気づかなかった。
 いや・・・正確には、コンの態度に違和感は覚えていた。が、それを深刻なものとは、受け止めていなかったのだ。

 とりあえず立ち話もなんだから、と、浦原さんは俺たちを伴って店の中へと入る。
 何度か訪れた店の茶の間のちゃぶ台の上には、良く見慣れた少しくたびれた感じの、ライオンのぬいぐるみが横たわっていた。

 むろん、今はピクりとも動かぬ、物言わぬ存在。

「まあまさか、朽木さんが尸魂界から訪問されているとまでは、思いませんでしたからねえ。もし来られると分かっていれば、もう少し穏便な方法を採らせていただいたんですが」


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12月04日(木)
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