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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!!(14)≪中編≫
───ゴメンネ、オ夏チャン。僕、オ夏チャンノコトモ、ズット守ッテアゲタカッタンダ・・・。
そう、言うや否や。
勇之介の体は温かな柔らかい光に包まれ始める。そうして、徐々に姿が明るさにまぎれて見えなくなったかと思うと・・・・・。
───唐突に、光はやんだのだった。
後に残ったのは、お夏のすすり泣く声だけである。
な・・・何だったの、今のは・・・。
今日は《鬼道衆》やら、炎の鬼やら、怨霊やらが次々に出てきて混乱のきわみだったけど、今のなんてその際たるものじゃない。さっきまで禍々しい怨霊だった勇之介が、あんな神々しい光に包まれて消える、なんて・・・。
呆然とするしかないあたしたちに、桔梗は悔しそうな口調でこう告げたのだ。
「まさか・・・あんたたちにこんな形で助けられるとは、思いもよらなかったよ、《龍閃組》」
「助ける? 何のことなの?」
当然、事情を知らない美里藍は、自分が怨霊にしたことで何が起こったのか、なんて理解できなかったんだけど。
その答えは、人を食ったような態度の九桐が教えてくれた。
「その様子では、何も分かっていないようだがな、美里藍。どうやら先ほどの怨霊は、お前に死んだ自分の姉の姿を重ねて見ていたらしい」
「私に・・・?」
「そうだ。自分のふがいなさから、死地に追いやってしまった姉にな。・・・だからお前に謝ることで、己の心の中に最後まで残っていた未練を、払拭することが出来た、というわけだ」
───事情は分かったわよ、事情は。
だけどあたしが知りたいのは、そんなことじゃないんだってば。勇之介が成仏したか否か、それだけなのよ! もったいぶってないで、さっさと教えたらどうなのっ!!
イライラとした感情を隠しもせず、あたしが睨み付けていたところ、どうやら心の声が聞こえたと見える。九桐はチラ、とあたしの方を見てから、明らかにホッとした表情になって言った。
「つまり貴殿の心配は、もう無用と言うわけだ榊殿。思い残すことがなくなった勇之介は、無事に成仏した。・・・あいつが狙っていたと言う行商の男が、殺されることはもうないだろう」
成仏・・・した? 勇之介が?
鬼のお墨付きを貰うや否や。
あたしは一気に、自分の体中の痛みを実感する羽目になった。
つまり・・・今までは緊張感でどうにかやり過ごしていたものが、ドッと押し寄せてきちゃった、ってコトよね。
「・・・・・・・・ッッ!!」
───とにもかくにもあたしは、頭にまで響くような火傷の熱さと痛みで、その場にうずくまってしまったわけだ。
懐に抱えていたお夏から手が外れ、彼女が恐る恐るあたしから離れていくのが気配で分かる。
「榊さんっ!?」
「榊様っ!!」
御厨さんと涼浬が駆け寄って来たみたいだけど、今のあたしの目はただただ床を映すだけ。指は床をかきむしるだけ。耳は飛び込んで来る音を集めるだけ。
焼かれたのは背中だと言うのに、喉やら胸やらが異様に苦しくて、咳が出て止まらない。視界もいろんな色の火花が散ったみたいになるし、呼吸は出来なくなるしで、体力が徐々に奪われていくことが分かる。
あたしは再び、意識を失うところだった。・・・だけど。
「桔梗、早く榊殿に治療を・・・!」
「榊が火傷しちまったんだ、美里、早く治してやらねえと・・・」
別々のところで《鬼道衆》と《龍閃組》がそう言っている声が聞こえた途端、とっさに大声を張り上げていた。
「余計なこと、しないで下さいよっ!!」
・・・その大声の反動で、再び痛みがぶり返してしばらく声が出なかったのは、この際ご愛嬌だと思って頂戴な☆
仮にも助けようとした人間本人に、そんな口を聞かれようとは思っても見なかったのだろう。
「何言い出すんだよ、榊! 美里はそこんじょそこらの医師よりよっぽど、腕が立つんだぞ?」
「榊殿、我らに借りを作りたくない気持ちは分かるがな、このままでは貴殿の命が危ういのだ。勇之介との約束を果たすためにも、ここは治療を受けて・・・」
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12月29日(月)
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