ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!!(14)≪後編≫
※とりあえず、このような決着と相成りました。
まあ本来の火附盗賊改方が、ここまで町人に対して実直だったかどうかは分かりませんが、1人くらいいても良いんじゃないでしょうか。
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「なっ!?」
あたしの言うことが思いもよらなかったに違いない。《龍閃組》も《鬼道衆》も、当然御厨さんも絶句していたみたいだ。
しょうがない。やっぱりここは、ちゃんと説明が必要と見た。ふらつく頭を堪えながら、あたしは床に手をついて何とか体を起こした。
「・・・良く考えて御覧なさいな。仮にも人を2人も死傷させた怨霊を、こちら側に1人の怪我人も出さずに退治した、なんて、そうそう信じてもらえるはず、ないでしょうが。不審がられるのがオチだわ。下手をすれば痛く・・・はあるけど痛くもない腹をさぐられて、ここの父娘のことを部外者に知られでもしたら、あたし今度こそ勇之介に呪い殺されちゃいますよ」
「・・・勇之介? さっきからお前ら、あの怨霊のことそう呼んでるけど、一体何者だったんだよ?」
蓬莱寺が余計な茶々を入れたことと、先ほどの美里藍が事情を把握していないらしいこと、これらの2点からあたしは察した。
───どうやら彼ら《龍閃組》は、この件が小津屋大火に端を発していることを未だ知らないのだ、と。
やはりこうなると、《龍閃組》の権限で今件の全てを誤魔化す、と言う奥の手を使うわけにはいかないだろう。
「後で御厨さんにでもお聞きなさいな・・・ともかく、こちら側が誰1人傷ついてないってことは、今回の事件で何か隠してるから疑ってください、って言ってるようなものなんですよ」
そう言ったところで、珍しく御厨さんが話に割って入って来る。それも、かなりあせった顔をして。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! まさか榊さん、最初からそれを狙って、あえて火傷を負ったとか言わないでしょうね?」
「見当違いなこと言わないで頂戴っ! 大体何の義理があって、赤の他人のためにわざわざあたしの自慢のお肌を痛めなきゃいけないのよっ!?」
「をいをい・・・☆」
「今、思い切り本音ぶちまけやがったな・・・☆」
蓬莱寺と風祭が揃って呟くのが聞こえ、あたしは慌てて体裁を取り繕い、コホン、とわざとらしい咳までしてみせる。
「・・・アレは単なる条件反射ってだけです。ただ、この状況をうまく取り込むことにこしたことはないでしょうが?」
「はあ・・・」
「話が逸れたわね・・・あたしが言いたいのは、万が一にもどこぞの無能者がやっかんで、妙な方向にツッコまれでもしたらどうするんですか、ってことなんです」
「どこぞの無能者、って・・・御厨、榊の言ってること、妙に説得力あンだけどよ、以前よく似たようなことでもあったのかよ?」
「さあな」
いつもは正直者の御厨さんだけど、さすがに今日は見事なまでに心の内を読ませない表情になっている。
あたしも蓬莱寺の言うことには取り合わないで、話を進めることにした。
「この際だから言っておきますけどね、《龍閃組》。あんたたちは真相を知っても表向きには、何も知らなかった、で押し通しなさい? この件は、小津屋で焼死した正体不明の怨霊が、当日小津屋を訪問しておきながら偶然助かった2人を妬んだ挙句、次々に襲った、ってことにするつもりなんですから」
「小津屋? 小津屋って、あのおろくって女(ひと)が火をつけたって言う、あの・・・?」
記憶力が抜群らしく、美里藍は「小津屋」って言葉に即座に反応を示すけど、あたしは構ってなんていられなかった。
・・・そう。実はここからが正念場。あたしはこれから、一世一代の大博打を張らなきゃいけないんだから。それも、恐ろしくつわもの相手に。
「そう言うわけですから。・・・さっさと今のうち、応援が来ないうちにさっさとこの場を立ち去りなさいな───《鬼道衆》」
「・・・・・・・っ!?」
今日何度目かの絶句。
だけど今ほど、一同を驚かせた発言はないと断言できるわ。
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12月30日(火)
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