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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(12)外法帖
「罪人の分際で木戸、突破して来たってわけ!? 良い度胸してるじゃないですか!」
「仮にも命の恩人に向かって、そんな口利くかよ!?」
鬼火をぶっ叩きながら振り向きざま毒づくのは、当然血の気の多そうな風祭。
「誰もあんたたちに助けてもらおうなんて、これっぽっちも思っちゃいませんよ!」
「あたしだって別に、あんたたち幕府の狗を助けるつもりで来たんじゃないよ! あたしなりのケリをつけに来ただけさ!」
聞き取り不明な呪文を唱えつつも、そう反論したのは桔梗である。
ところが1人だけ、やけに冷静な九桐は笑みさえ湛えながらこう言ったのだ。
「2人とも嘘はいけないぞ。榊殿が真っ先にたった1人でこの部屋に飛び込んだと聞いた途端、目の色変えて駆け出したじゃないか」
「「うるさいっ!!」」
もっとも彼の言い分は、即座に遮られたけど。
「だ、大体なあ九桐! お前は何で、炎への耐性が人並み以下なんだよ!? 水属性の技だって一個も覚えちゃいないし、何のために『空せ身』持ってるんだ!! 俺と女狐だけで闘えってか!?」
何やら顔を赤らめながら、風祭は九桐に苦言をぶつ。・・・どうでもいいけど、こいつら鬼火と闘いながらも、会話がかわせるのね。こうも緊張感が欠片も感じられないって、どういうことよ。
「どうせ覚えるのなら、もっと面白い技を覚えたいじゃないか」
のほほん、と答えながらも九桐が、こっち目掛けて攻撃して来る鬼火を槍でちゃんと退けている。
・・・って、ちょっと?
「どうしてあなたが、あたしの前にいるんですか!」
何時の間にか九桐が前方に立って、あたしを庇うようにしている。
一体どういうことよ、これは。敵に庇われるって事ほど、屈辱的なことはないって言うのに。・・・まあ逆に言えば、あたしへの嫌がらせ、ってこともありうるけど。
そしたら九桐は、その顔に張り付いたような笑顔で辛辣なことを言い出した。
「拝見したところ、あいにく榊殿の腕前では、こいつらを撃退することは出来ぬと思ったものでな」
「ぐっ・・・」
「まさかこの期に及んで、《鬼道衆》に庇われるくらいなら焼死した方がまし、なんて言うまい? この鬼火たちを退治するには、1人でも手数が多いにこしたことはないのだから」
「い、いけしゃあしゃあと言ってくれますね・・・」
怒りと屈辱で、あたしはそう言うのがやっと。
一方御厨さんは、と言うと、刀を振り回しても自分では鬼火を切れないと取るや、すぐさま水瓶の水を柄杓で、周囲にばら蒔くことに専念し始めた。
だけどそれだけで手詰まりだ、と悟ったようで。
「お前たちは一体、どうやって鬼火を切り伏せているのだ!?」
・・・あたしの部下は、思いの外『したたか』だった。先ほどの九桐の言い分を逆手にとって、鬼火の退治法を伝授してもらうつもりらしい。
そして九桐の方も、御厨さんのその態度を決して不快とはとらなかった。
「・・・2人とも、人を斬ったことは?」
「ある」
「泣く子も黙る火附盗賊改ですよ、経験あって当然でしょ」
「なら話は早い。方法と言っても、結局は人と対するのと変わらぬ」
「しかし・・・」
「炎と言う外見に惑わされるな。己の刀に負けられぬ、と言う魂を込めて打ち据える、それだけだ。少なくともそれで、鬼火の動きぐらいは止めることが叶おう・・・こうやってな!!」
言うや否や、九桐の槍が前方の鬼火の攻撃を阻む。そうしておいて、
『横倒!!』
ザンッ!
鋭い一撃を食らわせると、鬼火の動きが止まってしまう。その一瞬の隙を見逃さずに、九桐はそのまま横薙ぎの剣閃で見事、鬼火を屠るのであった。
オオオオオオオッ・・・!
断末魔の叫びが響く中、あたしと御厨さんも行動を開始せざるを得なくなる。
「はあっ!」
掛け声も勇ましく、御厨さんの刀が閃く。
その姿はまさに、凶悪な盗賊たちと対峙した時そのもので、何とか鬼火を弾き返すのに成功していた。そして退いた鬼火をそのまま追いかけたりはせず、向こうの方から襲いかかって来るのを待ち構え、渾身の力を込めて2度、刃を叩き付ける。
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03月20日(木)
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